テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、コンサルティング会社と会計事務所の代表を務め、スタートアップを中心に会計面・資金調達面からサポートを行っている岡野貴幸氏が、「電子帳簿保存法の改正」について解説します。


2022年1月1日から電子帳簿保存法が大きく変わります。今年の始めに電子帳簿保存法に関する記事を執筆しましたがしましたが、いよいよスタートします。今回の改正で大きな点が、電子化が義務づけられるものがあります。今まで電子帳簿保存は任意で、開始するまでにも3ヶ月前までに届出をしなければならないという大きなハードルがあったのでなかなか普及しませんでした。今回は義務になる部分があり、対応をしなければならなくなります。この義務となる部分について解説していきます。

電磁的記録による保存の区分

まず、電子帳簿保存法上、電磁的記録による保存は、大きく3種類に区分されています。

  • (国税庁より)

1.電子帳簿等保存とは

電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存するものです。帳簿は、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳等。書類は、貸借対照表、損益計算書、契約書、納品書等を指します。

2.スキャナ保存とは

紙で受領・作成した書類を画像データで保存するものです。紙をスキャンして電子化するイメージです。取引相手から受け取った書類以外に、自己が作成して取引相手に交付する書類も含まれます。領収書や請求書、その他、見積書、納品書、契約書などが該当します。

3.電子取引とは

電子的に授受した取引情報をデータで保存するものです。インターネットによる取引、電子メールにより取引情報を授受する取引等が該当します。

今回の改正で電子化が義務づけられるのが、「3.電子取引」になります。電子で受け取った情報は紙に打ち出すことなく、電子のまま保存することが義務づけられるというイメージです。では電子取引を電子のまま保存するにはどうすればいいでしょうか。

電子取引の保存に必要な2つの条件

電子取引を電子のまま保存するには、「真実性」と「可視性」の2つを満たさなければならないとされています。

真実性

1、タイムスタンプを付与し、電子のまま保存する。

2、記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受及び保存を行う。

3、正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、その規程に沿った運用を行う。

タイムスタンプとは、ある時刻にその電子データが存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明する技術のことを言います。データの正確性を証明するものです。このタイムスタンプが相手方から送られてくる時に付与されているか、もしくはデータを受け取った後に自身で付与することが出来れば電子のまま保存が可能です。

しかし、タイムスタンプを自社で付与するためにはシステムやツールを導入しなければならならずコストが発生します。コストかけずにやる方法もあります。それは「3」に記載されている事務処理規程を定めて、その規程に沿って電子データが改竄されないように保存していく方法です。事務処理規程は国税庁にサンプルも記載されています。まずはこの事務処理規程を作成して対応するという方法が現実的かもしれません。

可視性

1、保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと。

2、電子計算機処理システムの概要書を備え付けること

3、検索機能を確保すること
A、取引年月日、勘定科目、取引金額その他のその帳簿の種類に応じた主要な記録項目により検索できること⇒改正後の記録項目:取引年月日、取引金額、取引先に限定
B、日付又は金額の範囲指定により検索できること
C、二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること

「1」「2」については問題ないと思いますので、実質的にクリアすべき可視性の要件は、「3」の検索機能となります。最低限の検索要件としては、Aの「取引年月日」「取引金額」「取引先」の記録項目により検索できることが求められています。データ保管をする場合、検索が出来るようにExcelにて表を作成すること、保存データの名称を検索出来るように工夫しておくことが必要となります。

今回、義務化されたことで電子化が本格的にスタートします。今後、スキャナ保存に関してもどんどん電子化されていることが予想されます。これを機に、電子化を本格的に導入することを検討してみてはいかがでしょうか。