11月に入り、オフィスや通勤時の電車内を見渡してみると、せき込んだりマスクを着けたりする人の姿が目立つようになってきた。気温が下がり、空気が乾燥しだすこれからの季節は、さまざまなウイルスが増殖しやすい次期となる。そうなると、注意したいのが各種の感染症だ。

秋・冬シーズンの感染症の代表例であるインフルエンザウイルスやノロウイルスに感染した場合、感染者は出社を控えるのが好ましい。だが、自身がウイルスに感染している事実に気づかず、知らず知らずのうちに周囲に感染を拡大させてしまっている人がいるのが現状だ。

これらの「ウイルス禍」の加害者および被害者にならないためには、各種感染症を引き起こすウイルスについて正しく理解しておく必要がある。そこで本特集では、秋・冬シーズンに流行しやすい感染症の特徴や対策を紹介していく。今回はインフルエンザウイルスについて、小児科医の竹中美恵子医師にうかがった。

  • インフルエンザ対策にはワクチンが有効だ

    インフルエンザ対策にはワクチンが有効だ

インフルエンザの症状

インフルエンザといえば、例えは不適切かもしれないが「冬の風物詩」と言ってしまっても過言ではないほど、毎年寒い時期になると患者が激増する。例年、11月から3月頃までが流行シーズンとなっており、ピーク時には1週間あたり100万人単位で感染者が増加。厚生労働省が取りまとめたインフルエンザ発生状況によると、2017-2018シーズンの報告数は約2,230万にのぼったそうで、日本の総人口の約6人に1人にあたる計算になる。

「インフルエンザも風邪もウイルスによって引き起こされる感染症ですが、インフルエンザは通常の風邪に比べ感染力が強く、症状も重いため区別されます。主な症状には38度から39度にもおよぶ突然の発熱や頭痛、悪寒、全身のだるさ、筋肉痛、関節痛、喉の痛みなどがあり、全身に症状を呈します」

インフルエンザウイルスの感染経路

インフルエンザウイルスの感染経路は、RSウイルス同様「飛沫感染」と「接触感染」に大別できる。

飛沫感染

感染者のくしゃみや咳と一緒に飛び出したインフルエンザウイルスを吸い込むことにより感染する。これらの飛沫は、目に見えない微細な大きさで広範囲にまき散らされている。感染者には不必要に近づかない方が賢明と言えよう。

接触感染

インフルエンザウイルス感染者が咳やくしゃみをした際、手や指にウイルスを含んだ飛沫が付着することがある。その手や指でドアノブやスイッチ、電車のつり革などに触れるとその部分にもウイルスが付着。そういった場所を非感染者が触り、その手で鼻や口を再び触れると粘膜を通じて体内にウイルスが侵入し、感染に至る。

インフルエンザウイルスの感染予防策

効果的なインフルエンザ予防策としては、ワクチンが広く知られている。そして、ウイルス感染者に可能な限り近づかないようにすることも重要だ。

「インフルエンザに罹(かか)った人がくしゃみや咳をすると、ウイルスが細かい霧状となって空気中に飛び散ります。それを周囲の人が吸い込むと喉や鼻に直接ウイルスが付着するため、ワクチンだけでなく、手洗いやうがい、加湿、マスク着用を心がけましょう」