転勤や進学、あるいは出産などの理由でどうしても「クルマ」が必要になった場合、何かと高額な新車ではなく、手頃なプライスで買える「中古車」の存在は気になるところ。「でも、中古車ってすぐに壊れちゃうんじゃ……」。そんな疑念を、中古車ジャーナリストがバッサリと斬ります。

  • トヨタの3代目「プリウス」

    急遽、クルマが必要になったというそこのあなた。中古車を選択肢に入れない手はありませんよ?(画像はイメージです)

この世には新車だけでなく「中古車」もあるってこと、ご存じ?

俗に「カーマニア」と呼ばれる人種は、1台の車をなが~く所有する。あるいは、頻繁に買い替えることで「手元にクルマがある状態」を長期にわたってキープする。

だが、最近のニッポンの構成人員はカーマニアばかりではなく、むしろカーマニアのほうが少数派であるはず。

だとすれば、この春はこういった方々も多数いらっしゃることだろう。

「何年乗ることになるかはわからないけど、とりあえず今この瞬間、自家用車が必須な状況になった」

春といえば転勤やら進学やらが多く、また、これは季節要因とは関係ないが、「そろそろ子供が生まれる!」なんて人もいらっしゃるはず。そんな場合、「とりあえずの自家用車」が必要となるケースは意外と多いものだ。

で、そのようにクルマが必要となった場合、多くの人は「新車」の中から買うべき1台を探すのだろう。

だが、「新車も悪くないですが、もっとお安く買える“中古車”を、もっと積極的に検討してみてはどうですか?」というのが本稿の主旨だ。

「中古車なんてどうせすぐ壊れる」との説は本当なのか?

とはいえ、世の中には「中古車アレルギー」をお持ちの方もけっこう多い。

そういったアレルギーの持ち主の言い分はさまざまだが、かいつまんでサマライズすると、下記2項目におおむね集約される。

1. 中古車は買った後、すぐ壊れる

2. 誰が使っていたかわからないモノを買いたくない。触れたくもない

上記の「2」は人それぞれの感覚に基づくものでしかないため、ここで議論するべきものではない。「まぁ考え方、感じ方は人それぞれですね」としか言いようがない問題だ。

しかし「1」については、その事実関係についていささかの議論をしてみる価値はある。

本当に、中古車というのは買った後、すぐにぶっ壊れるものなのだろうか?

それこそ、中古車屋さんからクルマを引き渡された帰り道に、早くもエンストして……というのは大げさだとしても、3日後に壊れるとか、そうでないとしても3カ月後ぐらいには早々にどこかが壊れるというのが、中古車の「あるある」なのだろうか?

たしかに、そういったケースもあることを筆者は否定しない。だが、それは「レアケース」なのだ。

中古車とは、いわば「お向かいさんが乗ってるクルマ」である!

世の中には「古くてマニアックな中古車」というのがあり、そういうのは、正直けっこう壊れやすい。また、残念ながら「極悪販売店」というのもゼロではないため、運悪くそういった店に当たってしまうと、これまたけっこうすぐに壊れたりもする。

だが、今や極悪店はほぼ絶滅し、現在営業している中古車販売店のほとんどは、「ごく普通のビジネスマンが経営している、ごく普通のお店」だ。そこでは、ごく普通の国産車とか輸入車の、新車と比べれば少しくたびれたクルマが、その分だけお安いプライスで売られている。

で、そういった普通のお店の普通な中古車のコンディションとは、具体的には「そこらへんを走っている、今あなたが目にしているクルマ」とほとんど同じだ。

例えば、あなたの家のお向かいに住む木村さん(仮名)が所有している7年落ちぐらいのトヨタ「プリウス」。

それは、おそらく週末ごとくらいに駐車場から出庫し、どこかへ出かけ、そして夕方とか夜にはフツーに駐車場に戻ってきているはず。特に故障することもなく、故障発生の可能性に常にビビっている風でもなく、木村さん(仮名)のプリウスは、新車と比べればそりゃちょっとはくたびれてるけど、まあごく普通に稼働している(たぶん)。

その7年落ちプリウスを「車検だから」とかなんとかの理由で木村さん(仮名)が手放したものが、例えばの話、どこかの中古車販売店の店頭に並んでいる「2013年式トヨタ プリウス 87万円 走行5.2万km」なのだ。

そういった物件に対して「そんな中古車、どうせすぐぶっ壊れるに決まってる!」と考えるのは木村さん(仮名)に対する侮辱である――というのはわかりにくい冗談だが、とにかく、普通のお店で普通の車種を買いさえすれば(そして購入時、簡単なセオリーに従って販売店と物件それぞれのクオリティをチェックすれば)、まったくもってフツーに乗れるというのが、昨今の多くの中古車なのだ。

  • 木村さんが大事に乗った「プリウス」であれば、中古車として購入して受け継いだとしても、何も問題はないはずだ(木村さんは仮名、画像はイメージです)

それでいて、中古車の価格は基本的には新車より断然安い。モノや年式にもよるが、けっこういいやつが新車の半値ぐらいで買えてしまうことは多い。

車種やボディカラー、装備、あるいは数年後のリセール価格などに確固たる理想や明確なイメージを持っているなら、話は別だ。しかし、もしもそうでないならば――昨今の優秀でお安い中古車をハナから検討対象から外してしまうというのは、あまりにも馬鹿げている。