劇団ひとり(左)と福原遥=『ウレロ☆無限大少女』より
(C)「ウレロ☆無限大少女」製作委員会

――そもそも『ウレロ』を立ち上げるきっかけは何だったのですか?

最初は、東京03の単独ライブを見て、こんなに面白いなら、番組にしたいと思ったのがきっかけですね。で、別の企画を考えていたんですけど、「あ、俺コントをやりたかったんだ」と思い直して。その頃は、東京03に加え、バナナマン、劇団ひとり、バカリズムが、東京のライブの四天王だと思っていたので、その人たちとやりたいと思うようになったんです。でも、バナナマンは、放送枠の裏でラジオをやっていたので、この3組になりました。

――芸人さん中心の舞台ですから、やはりアドリブも多そうですね。

台本からは何分も膨らみます(笑)。だからそれも想定して、台本を作っておかないといけません。

――そうすると、放送時間もオーバーすることになりますよね。結構編集は入れているのですか?

アドリブでどうしても入らなくなってしまったところは、DVDで復活させることもあります。でも、リハを朝からやっているので、ちょっと固まってきたくらいで尺を測って、「これは現状10分くらいオーバーしてるから、ここのブロックは抜こうか」とか、「2~3分オーバーのまま来てるから、ここはもうちょっと膨らませてやっていいですよ」とかいう調整をしながらやっていくんで、10分オーバーになることは、そうはないですね。

――これまでのシリーズの舞台がアイドル事務所だったのを、最新の『ウレロ☆無限大少女』は、ヒーローを派遣する近未来の事務所に変わりました。この狙いは何ですか?

これはもう、第3シーズンの途中から、人間関係がこじれてきていたからですね(笑)。『ビバリーヒルズ青春白書』のようなアメリカのドラマみたいに、ずっと続けていたらいいんですけど、『ウレロ』はシーズン制でやって間が空いてしまうので、面白いんだけど設定が分からないというお客さんが結構いたんです。だから、これはもう思い切って仕切りなおして、新しい設定で新規のお客さんにも見てもらえたらいいな、と思ったというのが大きいですね。

――恋仲のような関係が出てきたり、裏切り者が出てきたり…確かに人間関係が複雑になってきていました(笑)。ところで、紅一点の早見あかりさんは、今シーズンでも変わらず、いい存在感を示していますが、何を見て声をかけたのですか?

彼女がももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)にいた頃にライブを見て、そこで不意なアクシデントがあっても対応できていたし、MCもやっていたので動じない子だというのは知っていました。そこで、女優になりたいということも聞いたので、最初に声をかけようと思ったんです。

――第1シーズンが終わったときは、泣きながら続編をお願いしたそうですね。

それが今やもう、若手売れっ子女優ですからね(笑)

――早見さんもアドリブはすごいんですか?

あかりちゃんが自分から急にアドリブを言うことはないですけど、目の前にきたアドリブにかぶせて乗っかっていくことは、自由にできます。普通の役者さんはみんな困るんですよ。一発本番でアドリブを言われると、きっかけになるセリフが変わるから、「おっ」と戸惑ってしまうんですけど、あかりちゃんはその辺りも自由にやってますね。

――第1シーズンのときは高校1年生ですから、そこからめきめきと成長したんですね。

いや、あかりちゃんは最初から度胸ありましたよ。その時からできる子でしたね。今回も、天真爛漫(らんまん)でおバカなキャラクターという、あかりちゃんがのびのびやれる設定にしたんで、楽しそうにやってます(笑)。後半に行くにつれて、どんどん面白くなっていくんで、楽しみにしてください。

清水富美加(手前)とおぎやはぎの矢作兼=『SICKS~みんながみんな、何かの病気~』より
(C)「SICKS」製作委員会

――女優さんで言うと、『SICKS』でも清水富美加さんが良かったです。

もともと舞台で見ていて、できる子だなというのは分かっていたので、『ウレロ』で舞台をやる時に最初にお声がけしました。『ウレロ』の1回目の舞台には高畑充希さんに出てもらって、その時はまだこんなに売れっ子にはなっていなかったので、ネームバリューよりもうちの演者とスウィングしてくれる女優さんを探して選んだんですけど、あっという間に売れちゃった(笑)

――清水さんも高畑さんも、朝ドラ女優になりましたもんね。本当にいい女優さんを次々に見つけてくるなぁという印象です。

『ウレロ』最新シーズンで準レギュラーになった福原遥さんも、舞台度胸があると聞いていたので選びました。バカリズムの妹役で探していて、ちょっと年齢が離れているんですけど、みんな納得するくらいやってくれているので、またいい人を見つけたなと思いましたね。

――そういえば冒頭で、入社当時「コントをやるならフジテレビ」と言われた話をされていましたが、なぜ『ウレロ』が実現できたのでしょうか?

この企画が通ったのは、劇団ひとりとバカリズムのおかげですね。まさかピン芸人のトップ2人が「ぜひやりたい」と言ってくれると思わなかったですから。東京03だけじゃ通らなかったですけど(笑)。丸1日スケジュールをもらって深夜の30分番組1本撮りですけど、これだけ時間があれば、ゴールデン番組4本は撮れます。すごい失礼なことを言えば、効率的に考えれば損ですよ(笑)

――今、テレビでコントをやっているのは、フジテレビは志村けんさんが深夜にやっていますが、『SMAP×SMAP』は本数が減っています。ほかにはNHK、そして佐久間さんくらいです。今やっている『ウレロ☆無限大少女』は、3月で終了してしまいますが、今後もコント番組をやっていきたいですか?

そうですね。『ウレロ』シリーズは、許していただける限り、やれるんだったらやりたいと思いますけど、大変なんですよね(笑)。僕はシーズン1から『ウレロ』の全部の回を、最終的に編集しているんです。毎回ディレクターが変わって編集すると、お笑いの突っ込みとかの"間"が変わってしまうと思って。そういう後悔をしないように、全部やっていこうと思ってやっているので、『ウレロ』をやっているときは、どうやっても毎週2日くらい徹夜になります(笑)。だから1年に1クールくらいにしないと、体力的にも限界なんです(笑)

――でもやりたい気持ちがあるので、体力が続くペースでやっていきたいと。

そうですね。『SICKS』も本当に幸せでした。僕、全部のコントの収録に行ったんですよ!

――え!? あの番組はオールロケでコントの本数も多いですから、別の現場で同時に撮っていると思ってました!

それは、なんとか時間を別にしてもらいました。朝7時両国集合とか、一番ひどい時は、大倉山の奥地に朝6時集合でも行きましたよ(笑)

――おぎやはぎさんにオードリーさんと、忙しい方たちばかりですからね。

でもみんな楽しそうでした。オードリーの若林(正恭)があんなに現場で楽しそうにしているのは、見たことがないですし。

――若林さんは、ラジオの『オールナイトニッポン』で「50年続けてやりたい」と話していましたしね。今後、『SICKS』のようなオールロケコントの番組もやっていきたいですか?

やれたらですね(笑)。これは本当に異例な番組ですから、なかなかやれないと思いますけど。

―― 一見バラバラなコントが、やがて1つにつながっていくというのは異例でした。あの構成を作るのに、会議も相当繰り返していたのですか?

一番最初は、この構想を伝えてから会議をしていたんですけど、らちがあかなかったので、僕がExcelの表を作ったんです。それぞれに僕の考えた仮のコントを置いておき、それが12話の間にこれが起こって、こうつながっていくという風に逆算していく形。それを、シリーズ構成で後半のドラマ部分の脚本を書く福原充則さんに渡して膨らましてもらって、それをまたExcelに落とし込んで。で、ほかの脚本の作家には「この事件さえ起こればいいから、コントの内容は変えてもいいよ」と言って発注して、思いつかない空白の部分はどんどん埋めてもらって。キャスティングが決まると、またピースが変わっていく…そういうパズルを組み立ててから、ストーリーを作っていきました。

――今までにない制作手法ですよね。こうした構成の構想は、まだあるのですか?

『SICKS』の続編がやれるならやりたいですし、アイデアはあるんですけど、なにせ大変なので(笑)。それに、うちの会社がやらせてくれるかどうか(笑)。『SICKS』だけじゃなくて、コントからいろいろな形に変わっていくアイデアはあるので、どこかでやれたらやりたいですね。

――それでも、『SICKS』は実現しました。

これは本当に、毎年企画書を出していた執念が通じたんだと思います(笑)。毎年コントは1本出そうと決めて書いていて、その中で、コントだと思っていたら違うものにたどり着く…というのをやったら面白くないですか?っていう変わった企画書が書けて。そして、それに乗っかってくれる人が、何人かいてくれたのが大きかったですね。

『SICKS ~みんながみんな、何かの病気~』(テレビ東京系2015年10月~12月、現在はBSジャパンで毎週月曜23:30~24:00放送中)
おぎやはぎ、オードリーらが出演し、さまざまな"現代病"をテーマにした、完全オールロケのコント番組。複数のコントに仕込まれた伏線が、やがて1つのドラマにつながっていくという、これまでにない構成で注目を集め、ギャラクシー賞テレビ部門の2015年12月度月間賞を受賞した。
3月28日にDVD・Blu-ray BOXが発売予定(発売元・販売元:「SICKS」製作委員会/価格は税別でBlu-ray-BOX14,800円、DVD-BOX11,400円)
(C)「SICKS」製作委員会