注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて“テレビ屋”と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。今回の“テレビ屋”は、ABCテレビのバラエティ番組『相席食堂』(毎週火曜23:17~)で、キウイ柄のTシャツがトレードマークの「キウイD」こと小高正裕ディレクターだ。
ワカメしゃぶしゃぶの画や、シーンの終わりの音を落とす編集を何度も入れたりと、独特のセンスに千鳥がツッコミを入れまくる小高DのVTRだが、本人いわく「全力で普通に(映像を)つないでたつもりだった」とのこと。その中で、「人の気持ちが動いているところを大事にする」という意識をより強調することで、「変な現象」が生まれていったと明かす――。
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小高正裕
1979年生まれ、愛知県名古屋市出身。愛知学院大学を卒業後、制作会社「クリエイティブ・ジョーズ」でキャリアをスタートさせ、『ちちんぷいぷい』『今ちゃんの「実は…」』といったバラエティ番組を担当。その後、飲食店の経営を経て再びテレビの世界へ。テレビ業界復帰後は、『相席食堂』などを担当する。(C)ABCテレビ
「ただただ一生懸命やってるだけ」
――前回登場したフジテレビの千葉悠矢さんが、小高さんについて「よく千鳥さんに『何やこのV』『お前ボケすぎや』ってツッコまれてる方なんですけど、個人的にキウイDさんのVTRが好きで、本当に細かい仕掛けが多くてクセも強いので、どういう気持ちで作っているのかを聞いてみたい」とおっしゃっていました。
ただただ一生懸命やってるだけです(笑)。名古屋出身で笑いの文化に育ってないんで、大阪に来てすごく思うのは、大阪の人ってやっぱりお笑いの偏差値がむちゃくちゃ高くて、お話が面白いんですよね。でも僕はそんなに人を笑わすことはできないんで、ただただ一生懸命やってるだけ。
――千葉さんは『相席食堂』を「VTRを作ったディレクターが矢面に立つシステムって、相当勇気がいると思うんですけど、千鳥さんとのコンビネーションが素晴らしい」とも感じているそうです。
多くの方から反響をいただくのは、ハライチの岩井(勇気)さんの回でワカメしゃぶしゃぶのインサートがめっちゃ多かったりとか、ずんのやすさんの回で、各シーンの終わりの音をオフっているのを何シーンもやったりとかっていう演出です。編集を「一旦普通につないできてください」って言われてたのですが、実は『相席食堂』の前にテレビ業界から離れていた時期があって、テレビのセオリーをよく分かっていない部分も多少あり、全力で普通につないでたつもりだったんです(笑)
――おかしな感じを狙っていたわけじゃない。
自分で最近気づいたのは、人の気持ちが動いてるところを大事にしてるんだな、ということ。ワカメしゃぶしゃぶのインサートが多かったのは、僕がむちゃくちゃワカメしゃぶしゃぶに感動して、「美味しいし色も鮮やかになるし、こんな最高なやつ、しかも船の上でやんの!?」って思って、自然とインサートが多くなってたんです。
でもプレビュー(事前チェック)で「なんでこんな多いんすか?」と聞かれたんです。で、「いやいや、めっちゃくちゃ良くないすか? こんなきれいになるし、めっちゃ美味いんすよ」って言ったら、プロデューサーの高木伸也さんがすごいのが、「分かりました。それだったら、ちょっと足らないです」「普通より多いけど、今言うてるニュアンスを伝えるんだったら、もうちょっと増やしてください」って言うんですよ。
――より強調しろ、と。
ずんのやすさんの時も、やすさんが女の子の話をしてる時に、最後ちょっと音をオフって残したら、言い訳してるみたいで、なんか変なこと言うてる感じがして楽しそうやなと思ったんですよ。そしたら、「だったら他のシーンでもそれをやってください」って。それで本番で千鳥さんが「いやいやおかしい」ってツッコむという(笑)
皆さん、僕がなんかすごいことを考えてるみたいに言ってくださるんですけど、そうじゃない。思い切ったことを番組でするってめちゃくちゃリスクだと思うんすけど、責任者である高木さんが覚悟を決めて、「もっとやれ」と。その懐の深さで、初期の頃の変な現象は生まれたんです。
水面に映る小籔…現場で起きてるものが面白い
――相川七瀬さんの回ではナレーションで遊んでいましたね(※突如、甘い声色となり「相川七瀬は胴長を着ていてもかわいい~」「できるよ~自分を信じて~」などとナレーションを入れた)
同じ回のもう一人の旅人が南野陽子さんで、どちらもスター歌手じゃないですか。だから南野さんの担当Dと「いい旅撮ってこようぜ」って言い合ってロケしたんですけど、作業場でお互いのVTRを見て「いやあ、いい旅だったねえ~」ってなったんです(笑)。いや、普通の番組ならいいんですけど「大丈夫か?」ってなって。この旅で、僕の気持ちが一番動いたところはどこかって考えた時に、相川七瀬さんが胴長着た瞬間に、「めちゃくちゃかわいいやん!」と思ったんですよ。だから、やるとしたら、その僕の気持ちをちょっとぶつけてみることかなあ、と。それで僕が彼女を応援してた時の気持ちを田(昌人)さんにナレーションしてもらったんです。
――小籔千豊さんの回では、いろんな液体に小籔さんの顔が映るというのをやって、千鳥さんにツッコまれていましたね(笑)
小籔さんとは、以前『ちちんぷいぷい』(MBSテレビ)や『今ちゃんの「実は…」』(ABCテレビ)でもお世話になっていたんです。で、ロケをしていた際、ふと水面に顔が映っていると面白いかもと思って、「小籔さんちょっと、もうちょっとこっち来てください」って水面に顔を映してみたんです。小籔さんも快く「あ、いいよ」ってやってくださって。
それで、たまたま顔写真の素材を持ってたんで、料理の映像を撮る時に、撮影チームに「これを反射させたいんやけど、どうしたらええ?」って聞いたら、やってくれたんです。だからこれは、カメラマン、技術チームが優秀だったからできたんですよ。
――え! 編集で入れたわけじゃないんですね!?
後から編集で加えるんやったら僕やってないんですよ。やっぱ現場で起きてるものが面白いと思ってるから。千鳥さんも『今ちゃんの「実は」…』で、小籔さんと一緒に番組に出ていたから、昔のことを思い出して喜んでくれるかと思ったんですけど、あんなにツッコまれると思わなかった(笑)