テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第260回は、1月28日に放送されたTBS系バラエティ特番『クイズ!倍買』(18:51~)をピックアップする。
「1問正解するごとに賞金が倍になるが、解答の選択肢も増えてどんどん難問になり、間違えると賞金は全額没収される」というルールのクイズ特番。これまで2021年3月から8度にわたって放送されてきたが、大半が日中か深夜で、土曜ゴールデンは初めてとなる。
しかも、今回は「完全制覇者現る」と予告しているが、最高賞金1,500万円超にどこまで迫ったのか。クイズ番組は2010年代の隆盛から苦しい時期に入りつつあるだけに、今後の可能性も占っていきたい。
■Snow Manは5/7問でアイテム使用
1組目の挑戦者は、Snow Man・阿部亮平と深澤辰哉の2人。所持金は3万円からスタートするのだが、画面右上に現在の賞金額が常に表示されていて分かりやすい。
続いて画面に映し出されたのは、「2択→小学1年生」「3択→小学2年生」「4択→小学3年生」「5択→小学4年生」「6択→小学5年生」「7択→小学6年生」「8択→中学1年生」「9択→中学2年生」「10択→中学3年生」というクイズ全体の一覧。
難易度と選択肢数が1段ずつ上がっていく流れはこれ以上ないほどシンプルだが、見れば見るほど計算し尽くされているような感もある。これまで大半の放送では、人物、音楽、チェーン店など、さまざまなテーマから出題されていたが、小中学生の問題に絞ったのは土曜ゴールデン対策なのか。
結局、Snow Manの2人は、2択・3択を連続正解して賞金は60,000円、120,000円とアップ。続く4択では日村勇紀が解答者に勧めるお助けアイテムの「ゴールドソード(選択肢を2つ消す)」を使用して30,000円を支払ったものの、正解して賞金が180,000円に上がった。さらに、5択でもアイテムの「ダーツソード(回転するダーツが刺さった数の選択肢を消す)」を使用して50,000円を支払ったものの、正解して賞金が260,000円にアップ。
6択でも新アイテムの「ティーチャーズソード(教員免許を持つ10人の解答を聞くことができる)」を使用して所持金の40%=100,000円を支払ったが、正解して賞金が320,000円に上がった。しかし、7択ではアイテムの「ミラクルソード(選択肢を2つにする)」を使用し、正解しても所持金の60%=190,000円を支払ったため、賞金は260,000円にダウン。
8択では再び「ティーチャーズソード」を使用し、所持金の40%=100,000円を支払った上に不正解でゲームオーバーとなった。結局、7問中5問で使った“アイテムありきのクイズ番組”であることが分かるだろう。
択一クイズと言えば、4択の『クイズ$ミリオネア』(フジテレビ系)を思い出す人が多いのではないか。1問ごとに難易度と賞金が上がっていく構成も似ているが、みのもんたと挑戦者がそうだったように、『クイズ!倍買』も設楽統と挑戦者の駆け引きが見どころの1つとなっている。
もう1つ今回の大きな変化は、1問3分の制限時間が設けられたこと。画面右下にカウントダウンが表示され、シンキングタイムの緊張感は土曜ゴールデンにふさわしいものがあった。
■9択・10択問題が簡単だった理由
2組目の挑戦者は、藤岡弘、ファミリーで、父・藤岡弘、に加えて長女・愛(21)、長男・真威人(19)、次女・天音(17)、三女・舞衣(15)がスタジオに登場。藤岡ファミリーはアイテムを使いながらも正解を重ね、賞金を880,000円に上げて9択に挑戦した。
その問題は「徳川十五代将軍にいたのは?」で、9つの選択肢は「家忠」「家慶」「家政」「家秀」「綱重」「定家」「定信」「信康」「綱家」。藤岡ファミリーは「ティーチャーズソード」を使用したが、「家忠」が3人、「家慶」が3人、「家政」が2人、「綱重」が1人、「定家」が1人と割れてしまい、結局「家忠」を選んで不正解に終わった。
正直、ここは「9択問題としてはかなり簡単ではないか?」「10人中7人ものティーチャーが本当に間違えたのか?」という疑問が浮かんでしまった。特に後者は解答の散り方が作為的に見え、「ティーチャーズソード」はこのようなケースばかりだっただけに、真相はさておき制作サイドも取り扱い注意のアイテムかもしれない。
3組目の挑戦者は青山学院大学駅伝部チームで、原晋監督、妻で寮母の美穂さん、3人の学生が参加した。青学駅伝チームは「ティーチャーズソード」を3回も使いながらも、賞金1,240,000円で最終問題の10択に挑戦。その問題は「実在する星座は?」で、「人魚座」「イグアナ座」「ねこ座」「かみのけ座」「リボン座」「ネックレス座」「振り子座」「スプーン座」「方位磁針座」「虹座」の10択が表示された。
ここで日村が「ダーツソード」を使うと獲得賞金1,740,000円、「ティーチャーズソード」を使うと同1,500,000円、「ミラクルソード」を使うと同1,000,000円となることを説明する。青学駅伝チームは迷ったあげく「ミラクルソード」を選び、「かみのけ座」「ネックレス座」の2択になり、生徒たちは「ネックレス座」を押したが、最後は原監督の独断で「かみのけ座」を選んで賞金1,000,000円を獲得した。
ただ、これもクイズ番組では常識と言えるレベルの問題であり、選択肢が出た瞬間、「かみのけ座だ」と気づいた視聴者は少なくなかっただろう。前述した「徳川家慶」なども含め、制作サイドが意図的にファミリーで楽しめる難易度の低い問題を用意した感がうかがえる。
ちなみに、Snow Manのファンたちは「徳川家慶、かみのけ座なら、ジャニーズクイズ部・部長の阿部亮平が答えられたはず」と思ったのではないか。出題者に合わせたジャンルや難易度を設定することがクイズ番組スタッフの仕事であり、各挑戦者が「答えられそうで答えられない問題を選ぶ」という点で作り手の確かな技術を感じさせた。