テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第239回は、27~28日に放送された日本テレビ系大型特番『24時間テレビ45』をピックアップする。

45回目を数える今年のテーマは「会いたい!」。メインパーソナリティーをジャニーズのYouTubeユニット・ジャにのちゃんねる(二宮和也、中丸雄一、山田涼介、菊池風磨)、チャリティーマラソンランナーをEXIT・兼近大樹が務めた。

コロナ禍に突入してから3年目の放送になるが、何が変わり、何が戻ったのか。今回はあえて放送内容の詳細ではなく、各コーナーを横断的に見ていきたい。

  • 『24時間テレビ』

    『24時間テレビ』

■「最も変わった」のはSPドラマか

番組は、ジャにのちゃんねるの4人が嵐の「Happiness」を歌いながら両国・国技館へ入るところからスタート。客席のファンとおぼしき女性たちを見ても、その様相はチャリティー番組というより“ジャニーズエンタテインメントショー”だった。

さらに、指原莉乃、中条あやみら芸能人が募金をした人と電話でライブ会話する様子が映され、続いて5年ぶりの単独チャリティーマラソンに挑むEXIT・兼近大樹と、亡き父との約束で51.5kmのトライアスロンに挑む子役・村山輝星が登場。これらに、風間俊介の日本全国弾丸ツアーを合わせた計4コーナーが通し企画として紹介された。

まず、それぞれの時間帯で放送された企画をざっと挙げていこう。

○27日開始から深夜帯
「胸から下がマヒした女性の人生かけた願い おなかの我が子に会いたい! その瞬間のドキュメント」
「橋本環奈×我無沙羅 橋本環奈と耳の不自由な子どもたち 心ひとつに挑む応援団パフォーマンス」
「もう一度あの声に会いたい…河村亮 実況に捧げたアナウンス人生」
「羽生結弦に会いたい! プロ転向後テレビ初演技被災地へ…17歳の少女へ思いを込めたSPアイスショー」
「東日本大震災から11年…二女を捜し続ける父」
「スペシャルドラマ 無言館」
「24時間テレビもヒッパレ! あの名曲に会いたい!」
「ジャにのちゃんねるは眠らない! 深夜の日テレ系 伝説の映像大賞」

番組は「障害者のドキュメントとパフォーマンス」という長年『24時間テレビ』のベースとなってきたコンテンツからスタート。そこに、ジャにのちゃんねるや橋本環奈などの「芸能人が寄り添うことで視聴者を引きつける」という形は不変だ。

さらに、重要な初日の20時台には、亡くなったばかりの日テレ・河村アナと、プロ転向後テレビ初演技の羽生をピックアップ。日テレはコア層の個人視聴率獲得を進めているが、この番組に限っては中高年層を含めた幅広い年齢層を集めようという姿勢が伝わってくる。

特筆すべきは「スペシャルドラマ 無言館」。ジャニーズ以外の主演作は17年ぶりであり、戦争絡みのテーマを選び、監督・脚本に劇団ひとりを起用したことなど異例尽くしだった。これが「今回の放送で最も変わったこと」だったかもしれない。

一転して深夜帯の「ヒッパレ!」と「伝説の映像大賞」は、このところ過去番組の復活やアーカイブの発掘に力を入れている日テレらしい企画。手間はかかっても話題性とコスパは上々であり、他局のテレビマンの参考にもなったのではないか。

■バランスはいいがネット上は不発

○28日朝から午前中
「日テレキャスター大集合! 24時間テレビ的ニュースショー」
「ロシアによる侵攻から半年 有働由美子が戦地ウクライナへ」
「日本列島ダーツの旅的全国1億人インタビュー」
「世界的戦場カメラマン小原玲 人生をかけて撮った最後の一枚は…」
「桝の長年のギモンに答える人 生態系を守る画期的アプリとは?」
「伝説の家政婦志麻さん 全国朝どれ食材 LIVEキッチン!」
「30年前の忘れられない記憶 藤井貴彦の原点 キング・カズとの出会い」
「あなたの会いたい人 ~東日本大震災で少女が警察官と誓った約束~」
「奇跡の瞬間を見逃すな! ジャにのスゴ技生チャレンジ」
「相葉雅紀、会って自分の目で確かめたい~保護犬トリミングのその先~」
「日本列島ダーツの旅的全国1億人インタビュー」
「私がママになる日~遠藤和さんの命の日記~」
「すぎやまこういち物語 ドラゴンクエスト『序曲』知られざる誕生秘話」
「日本列島ダーツの旅的全国1億人インタビュー」
「生き別れになってしまった姉妹29年ぶりの再会」
「片腕を失った少女がひと夏の挑戦! チアパフォーマンス」

午前中は、有働由美子、桝太一、伝説の家政婦志麻さん、藤井貴彦ら、日テレが誇る好感度の高い人物を立て続けに起用。彼らを前面に出したヒューマンドキュメンタリーと、「日本列島ダーツの旅的全国1億人インタビュー」の牧歌的な笑いを交互に見せていた。

○28日午後~終了
「日本に元気を! 戦後70年を彩る ダンス&ファッションSPショー」
「日本列島ダーツの旅的全国1億人インタビュー」
「会いたい! 応援歌メドレー」
「燃える闘魂! アントニオ猪木がなぜ闘病生活を見せるのか」
「国技館で逢いましょう」
「最後のサライ~ミュージシャン加山雄三の決断~」
「MISIAが31年ぶりの再会! 故郷の島で歌を教えてくれた恩師」
「亡き母から二十歳の私へ…時を越えて届いた奇跡の贈り物」
「笑点×24時間テレビ 対抗大喜利」
「YOSHIKIとウクライナから来たバレリーナ 日本への感謝、そして決意のダンスショー」
「手足が動かなくなる病…それでも笑顔で! 少女の夢を叶えるパラデル漫画プロジェクト」
「車イスの少年とジャにのちゃんねる 心をひとつに! 集団フォーメーションダンス」

『ヒルナンデス!』メンバーのダンスは親子そろって見られるエンタメ性があり、夏の超長時間特番にふさわしいお祭り企画。その後、ベテランのアントニオ猪木と加山雄三、アーティストのMISIAとYOSHIKIらネームバリューのある大物が登場し、ラストは「障害者のドキュメントとパフォーマンス」という『24時間テレビ』のベースに戻った。

日テレらしいバランス感覚に長けた構成だが、その一方でSNSをザワつかせるような目玉やサプライズは見当たらなかった感がある。実際、Twitterが大きく反応したのは兼近大樹と羽生結弦くらいだったのではないか。そんな抑制的な企画が並ぶタイムテーブルはチャリティー番組らしい反面、若年層を中心に「1つも見ずに終わった」という人も多かったのかもしれない。