テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第203回は、10日に放送された日本テレビのバラエティ特番『NETAMI』(24:30~)をピックアップする。

「芸人が妬むネタだけを選び、さらにネタ論を語る」という新たなネタ番組であり、12月10日、17日、1月7日の全3回にわたって放送するという。

MCはバカリズム、東京03・飯塚悟志、ハライチ・澤部佑の3人が務め、毎回MCとゲスト2組の計3ネタを披露。第1回はバカリズムの「海の上の○○」、さらば青春の光の「オカリナ」、ニッポンの社長の「カメハメ波」が放送された。

  • (左から)ハライチ・澤部佑、バカリズム、東京03・飯塚悟志

    (左から)ハライチ・澤部佑、バカリズム、東京03・飯塚悟志

■「クスクス笑い」に見るハイレベル

オープニングは澤部と飯塚の2人が登場。すかさず澤部が「まずはわれわれMC陣からバカリズムさんのネタを」と振りを入れ、飯塚が「MCがトップバッターのネタ番組って史上初じゃない?」と受ける形で番組が始まった。確かにMCがネタを披露する番組すら珍しいだけに、トップバッターというのは新しい。

そのバカリズムについて、飯塚が「天才。人と全然違いますね」と称えると、澤部が「設定から何から」と呼応。ここで画面に“嫉妬POINT 唯一無二の天才”という文字が表示された。ただ、すでに多くの人々が思っていることであり、最初の“嫉妬POINT”とするには番組のつかみとして弱かったかもしれない。

すぐにバカリズムの「海の上の○○」がスタート。失恋した女性がイルカを見られる船に乗るが、途中で飽きてイルカに毒を吐き続ける……という設定だったが、何より「テレビ初出しネタ」ということに驚かされた。「たまたま」というより、「新番組への意気込み」と好意的にとらえてもいいのではないか。

ネタが終わると、飯塚が「めちゃくちゃ面白いよ。だってイルカ見て、出オチを引っ張ってるだけって」と笑うと、“嫉妬POINT 独特すぎるネタの切り口”が表示された。

これにバカリズムが「実話ですからね。珍しいパターン」とネタ作りのきっかけを明かすと、飯塚は「イルカ見はじめてから飽きてるところって(バカリズムは)全然しゃべらずに見ている(だけな)のに、あれをクスクス笑ってくれるお客さん(がいい)」と話を広げる。

ここで画面に“お客さんのクスクス笑いを笑談”という文字が表示された。つまり、「ここがトークの笑いどころだから注目して」という予告なのだろう。

飯塚「(お客さんの)クスクスが自分たち(芸人)にとってよりどころというか」
バカリズム「そう。クスクスきたから安心して引っ張れた。笑わない場合、(切り替えが)早いよ」
澤部「すごいこと言ってるな。つなぎのクスクスで芸人たちは支えられている」
飯塚「でもクスクスほしいところで『ハハッ』って大きめの笑い。それはそれで違う」
澤部「わがままでしょ、芸人たち」

と、3人でたたみかけた。

確かに“クスクス笑い”をピックアップして話を広げ、しかも30分番組を意識してコンパクトにまとめつつ笑わせる話術はすごい。

■称賛に毒を含ませるバカリズム

2組目は、さらば青春の光で、ネタは飯塚が妬む「オカリナ」。飯塚が「着眼点というか設定が本当にいいんですよ。このネタは特に自分で思いつきたかった」と語ると、“嫉妬POINT 秀逸な設定”が表示された。

ネタは、成功者の社長と契約がほしい営業マンの商談コント。社長が「ハマっている」というオカリナの値段、重さ、音などを尋ねられた営業マンが困ってしまうというものだった。

これを見た飯塚が「やっぱね絶妙なチョイスね」と語ると、“嫉妬POINT オカリナのチョイス”が表示。バカリズムが「オカリナだけで通しているのがネタとして美しいですよね」と応じると、“嫉妬POINT オカリナ1本で通す美しさ”が表示された。

さらに、バカリズムは「ネタ見せとかで言ったら、『もっといくつかオカリナ的なものを出して展開させたほうがいい』って言われがちなんですよ。でもそれやると下品なんです」と称えながらも、含みのあるコメントを続ける。すると飯塚が「言われてきたね」、バカリズムが「言われてきた。そう」、澤部が「作家さんはそういうこと言いがち」とたたみかけてトークを締めた。ここでも、何気ないトークにおける嗅覚と瞬発力が素晴らしい。

3組目は、ニッポンの社長で、澤部が妬むネタ「かめはめ波」。澤部が「(ツッコミの)ケツが頭おかしいんですよ……と思ったらどっちも頭おかしいんです」と語ると、“嫉妬POINT どっちも頭おかしい”が表示された。

ネタは、ケツが「かめはめ波が撃てるようになった」と言って実演するが、辻が「本当に出てるな」とまさかの反応。ケツが「出えへんねん。あれ漫画」とキレる形で進み、最後は観客を巻き込んでキレるネタだった。

これを見た飯塚が「ホントに頭おかしい」と反応すると、バカリズムも「情報量の少なさ。素晴らしいですね」と呼応し、“嫉妬POINT 情報量の少なさ”が表示。ここでトークは切られてしまったが、「情報量が少ないことになぜ嫉妬するのか」は視聴者に説明が必要だったのではないか。