テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第192回は、24日に放送されたTBS系バラエティ番組『A-Studio+』(毎週金曜23:00~)をピックアップする。
笑福亭鶴瓶とKis-My-Ft2・藤ヶ谷太輔がゲストの家族や親友などを極秘取材し、「他番組では見られないゲストの素顔を引き出す」というコンセプトのトークバラエティ。今回のゲストは、9月での芸能界引退を発表している夏目三久であり、残りわずかの芸能生活となった今、何を語るのか。「MC2人の力と番組のポテンシャルが試されている」というムードが漂っていた。
■鶴瓶と藤ヶ谷のアイスブレイク
番組は、藤ヶ谷が夏目の楽屋を訪問するシーンからスタート。スタジオ入り前から映すことで、ゲストの素顔や緊張感を見せられる上に、視聴者の期待感を高められる効果的な演出だ。
ここで夏目が「最後に出させていただいてうれしいです」と話すと、藤ヶ谷が「サプライズもございます。失礼します」と、まさかのネタバレ。これは「うっかり」というより、毎週さまざまなバリエーションを駆使している藤ヶ谷の余裕なのだろうか。
夏目がスタジオ入りすると、まずは紹介VTRが流された。2007年の日本テレビ入社と『おもいッきりイイ!!テレビ』への抜てき。退社後の『マツコ&有吉の怒り新党』(テレビ朝日系)、『真相報道バンキシャ!』(日テレ系)、『あさチャン!』(TBS系)と各局の番組に出演。今年4月、有吉弘行との結婚。そして、9月末ですべての仕事を辞める……。
「正直、これほどのトピックスを持つタレントのトークを30分でまとめるのは無理ではないか」と思った。だからこそ鶴瓶・藤ヶ谷の質問やスタッフの編集が気になってしまう。
まず鶴瓶は、自身が「『あさチャン!』の大ファン」であることからトークを始める。鶴瓶は大阪出身の夏目がポロッと大阪弁をしゃべったシーンを事細かにメモしていて「変態や」と自虐したが、「『あさチャン!』続けてきてこんなごほうびはないです」と夏目を喜ばせた。人の懐に入るのがうまい鶴瓶の真骨頂であり、藤ヶ谷の楽屋訪問とともに、緊張感をほぐすアイスブレイクとなり、「プライベートをついしゃべってしまう」という状態につながっていく。
鶴瓶は『あさチャン!』の出演時は「2時45分に起きる」という夏目に、「あの人は何時に起きるの?」と有吉の話を振り始める。これに夏目が「正確には把握していないですけど、私が(番組を終わって)帰ってくると起きています。9時前には帰っていますね」と返すと、すかさず鶴瓶は「5時半に起きます。あの人」と即レス。夏目が「エッ? ちょっと待って。そんなに早いんですね」と驚き、有吉の写真がインサートされた。
夫の登場というサプライズに夏目は「これはあの人ですか……」と笑っていたが、視聴者は「有吉さんは『あさチャン!』を見るために早起きしているのかも」と想像できたのではないか。真相は分からないが、何ともほっこりさせられるエピソードだった。
■意外な有吉の姿が次々に明かされる
夏目は日テレを辞めたばかりの10年前に『怒り新党』で有吉と出会ったことや、「収録のときだけプロフェッショナルに徹して、あとはササッと帰っていく」「『チームでやろう』っていう意識はすごく強いですね」などと当時の印象を語った。
さらに、「ベランダの観葉植物をわが子のように育てている。毎日うれしそうに『芽が出てきたよ』とか『実がなったよ』と報告してくれます」「家で『有吉の壁』(日テレ系)を一緒に見ているとゲラゲラ笑うんですよ。『みんな面白いよね』ってしみじみ言うんです」「それで『仕事好きだね』って言ったら、『いや、俺は人が好きなんだよ』って酔っ払いながら言ってました」と夫婦のエピソードを次々に披露。
夏目はさんざん話したあとに「こんなこと言っていいのか分からないけど……」「テレビでこんな話してる自分がドキドキ」と笑顔を見せていた。新婚らしいこんなノロケ話が聞けたのは、『A-Studio+』と鶴瓶・藤ヶ谷が醸し出すムードの良さによるものだろう。
続いて登場したのは『あさチャン!』のパートナーである藤森祥平アナ。同番組でのエピソードに続いて、弟の結婚式司会を依頼したことをきっかけに、優秀な姉と比べられた幼少期の話に突入する。比べられるのが嫌で中学受験をして姉と違う学校へ入ったことなどが明かされると、夏目は「A-Studio怖いです」と笑顔ながらも驚きを隠せない。
次に高校の同級生たちから写真つきメッセージのサプライズがあり、その中の1人にリモート取材を実行。「おしゃれで目立っていたけど、必ずどこかに歯磨き粉がついていた おっちょこちょい」という意外な姿が明かされたあと、合唱コンクールで歌った中島みゆき「誕生」のCDが流れる。「当時の合唱をそのままBGMに使いながら話を聞く」という演出は粋で、いかにも鶴瓶が「これ、エエな」と好みそうなものだった。