テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第147回は、7日に放送されたテレビ朝日系バラエティ番組『なにわ男子と一流姉さん』(毎週土曜23:30~)をピックアップする。

今秋にスタートした関西ジャニーズJr.・なにわ男子による全国ネット初の冠番組。なにわ男子は、まだメジャーデビュー前であるにもかかわらず、ティーンからの圧倒的な人気を誇り、「ポスト嵐」の声もあるなど、テレビマンたちにとっては早くも目を離せない存在となっている。

当番組は1クール限定の放送予定だが、人気次第では継続の可能性もあるだけに、彼らと番組の魅力をチェックしていきたい。

■なにわ男子を生かす「ヘタレ扱い」

番組冒頭、「突然ですが、ネット上で最も影響力のある25人(アメリカ『TIME』誌2018)に日本人で唯一選ばれた女性、どなたかわかりますか? 正解は一流エンターテイナー・渡辺直美」というナレーションが流れた。

さらに、「芸人でありながらファッションモデルや女優業など多岐にわたり活躍。インスタグラムのフォロワー数は国内最多の940万人」「2016年には世界進出。ニューヨーク、ロサンゼルスなどで行われたワールドツアーは大盛況!」「なぜ渡辺直美は世界に通用するエンターテイナーになりえたのか? ジャニーズ期待の新星・なにわ男子がその一流の極意を徹底取材」とたたみかけた。

この番組は、真っ先に“姉さん”の一流ぶりをはっきり印象づけておかなければいけないのだろう。まだCDデビュー前のなにわ男子と一流姉さんの対比が番組の前提条件であり、それがあってこそ学びや笑いが生まれるのではないか。

今回の調査員は、リーダーの大橋和也(23歳)と最年少の道枝駿佑(18歳)の2人。前回はエース格の西畑大吾を黒柳徹子と対峙(たいじ)させていたが、2回目も知名度・キャラクターともに納得の人選と言えよう。

2人は直美から「3つの一流の極意」を教えてもらうという。さらにそれが「その1:体は“?”から鍛える」「その2:魅せるダンスのポイントは“?”」「その3:食事は“?”が大事」と伏せ字を入れて内容が明かされる。ただ、「なにわ男子が性別もジャンルも異なる直美に体・ダンス・食事のポイントを聞く」という必然性があいまいだからか、それほど“?”の内容が気にならなかった。

大橋と道枝が待ち合わせのビル地下へ向かうと、一心不乱にトレーニングをしている直美を発見。10月から本格的にニューヨークで活動するため、その前に骨格から体を作る「ポジショントレーニング」というものをしているらしい。

さっそく2人も体験するが、背骨のゆがみをまっすぐ矯正するトレーニングで、いきなり大苦戦。ただこれは「関西で圧倒的な人気を誇り、歌って踊る、なにわ男子ならきっと余裕のはず」というフリのナレーションと、「七流のポイント 18歳と23歳の現役ジャニーズなのに困難!!」というオチのテロップから、“姉さん=スゴイ、なにわ男子=ヘタレ”の図式で進めようとする演出ではないか。

続く「バランスディスクに乗って耐えられるか」というコーナーでも、直美がうまくできた一方で道枝はすぐに落下。「道枝インナーマッスルなし」のテロップが流れされた。彼らの魅力と言えば、アイドルらしいルックス、笑顔、人懐っこさ、素直、礼儀正しい……その大半が「かわいい」という言葉に集約される。

さらに、彼らがそれを笑いにつなげるのが得意という側面も見逃せない。だから、制作サイドがいい意味でのヘタレ扱いをしたくなるのは当然だろう。

■渡辺直美とジャニーさんの考えが一致

道枝から「直美さんの体はどこが一流?」と聞かれたトレーナーは、「まず筋肉の質が素晴らしい。プロアスリート選手に近い柔らかくて弾力のある筋肉」と絶賛し、「一流のポイント インナーマッスルが優れている」というテロップが表示された。何ともわかりやすい“学び”なのだが、教材ビデオのようでもある。

ダンス時のポイントを聞かれた直美は「ダンス+表情を頑張っている」と答え、「表情アリ」「表情ナシ」の両バージョンを踊って違いを見せた。ここでも「なにわ男子のビジュアル担当。ファンから『リアル王子』と呼ばれ、クールにパフォーマンスをこなす道枝。殻を破れるか?」というナレーションであおられた道枝が「表情アリ」のダンスに挑戦。スタジオのメンバーから「初めて見た。こんなミッチー」という声が飛んだように、少しハジけた姿を見せ、「一流のこだわり 海外でパフォーマンスする時はまず自分が楽しむ」というテロップが表示された。

ダンスを終えた3人はグランドハイアット東京の「フレンチ キッチン」へ向かい、ビュッフェを楽しむことに。いきなり豪快に料理を取る直美に「一流の極意 食事を選ぶ時は勢いが大事!?」のテロップが表示されたほか、大橋から「作法とかあります?」と尋ねられて「作法? ないよ。そんなのぶっ刺して食えばいんだよ」と即答して笑わせた。

直後、直美が「ニューヨーク行きを伝えたい」という同期・ジャングルポケットの3人が登場すると、大橋と道枝は「よろしくお願いします」としっかりお辞儀。先週の西畑も今週の2人も「誰に対しても積極的に教えを請う」という姿勢が徹底されていて、彼らを応援したくなった人は多いのではないか。そんな好感度アップこそがこの番組の目的なのかもしれない。

大橋から「直美さんのお話を聞いて世界で活躍することをどう思いました?」と聞かれた太田博久は「『そうなるだろうな』って周りは思ってた。『こうじゃなきゃいけない』みたいなことをしてこなかった人。本当にないところを自分で道を作ってきた人だから。この挑戦は芸人全体の未来な感じがするよね」と直美を絶賛。ここで「一流の極意 できた道を歩まず自ら開拓して進む」のテロップが表示された。

さらに、大橋から「なにわ男子が世界進出するのにどういったらいいですか?」と質問された直美が「世界に合わせるんじゃなくて日本のエンタテインメントを世界に発信することに意味があると思う」「自分の国の文化を大事にしている人が(海外の人も)好きだと思うから」と熱っぽくアドバイスすると、スタジオの西畑が「まるまるジャニーさんと一緒の考え方」と驚いていた。

■発展途上のアイドルを見守る楽しさ

このシーンこそが、今回のハイライトだったのではないか。ならばこの番組は、「笑いより学びを押し出した番組」なのだろうし、実際に笑いの手数は少なかった。ただ、学びを重視することでかわいさや性格の良さを押し出すことはできるが、日ごろ関西で鍛えられている彼らなら、もっと笑いを生み出すこともできるだろうし、まだスタッフが彼らを生かし切れていないようにも見える。それだけに1クールのみの放送が惜しく感じてしまった。

その後、冒頭に挙げた伏せ字の答え合わせとして、「その1:身体は“骨格”から鍛える」「その2:魅せるダンスのポイントは“表情”」「その3:食事は“勢い”が大事」が映されて学びの時間は終了。締めくくりとして「最終テストを実施する」という。その内容は「渡辺直美の代名詞・ビヨンセの当て振りダンス」で、大橋が挑戦することになった。

ほどなく大橋は、直美のビヨンセとほぼ同じピンクのワンピース姿で登場し、完コピに近いダンスを見せ、本人とも共演。自らのVTRをスタジオで見守る大橋は「イヤや! 見られたくない」「これ、全国放送ですよね!?」と動揺するも、本音は「してやったり」の心境だったのかもしれない。大橋はレギュラー解答者として出演する『クイズ!THE違和感』(TBS系)でもグループを引っ張るトークを見せているだけに、来年以降の活躍が楽しみだ。

最後に直美のガチ採点が発表され、大橋は100満点を獲得。道枝とともに、戸惑いながらもすべてやり切る姿は若手アイドルならではのもので、若手俳優や若手アーティストはここまでやらないだろう。今年、NiziUのブレイクに貢献したオーディション番組と同じように、この番組からも「発展途上の若手アイドルを見守る」という楽しさが感じられた。

番組は動画配信サービス・TELASA限定のオリジナル番組『なにわ男子 一流への道』をPRして終了。こちらは「さまざまなテーマで一流を目指すロケを行う」というコンセプトであり、よりファン向けの番組だが、成長スピードはさらに加速するのではないか。

■次の“贔屓”は…「総フォロワー1,000万超」の10代が集結! 『超無敵クラス』

『超無敵クラス』MCのかまいたち(左)と指原莉乃

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、15日に放送される日本テレビのバラエティ特番『超無敵クラス』(12:45~13:45)。

今週末に放送される番組の中で最も気になったのが、「誰も見た事のないスクール型トークバラエティー」を掲げたこの番組。MCにかまいたちと指原莉乃、ゲストに風間俊介と中川翔子を迎えつつ、事実上の主役は“超無敵クラス”を形成する24人の10代たちが務める。

その顔ぶれは、Popteen専属モデルから、シンガーソングライター、YouTuber、作家志望の開成ボーイ、ミス・ワールド2020日本代表まで多士済々(彼らの自己紹介動画が日テレ公式YouTubeで配信中)。その勢いは「総フォロワー数1,000万超え」という数字にハッキリ表れていて、どんなキャラクターがいるのか興味深い。

テレビマンたちにとって必要な「10代視聴者の心をつかむ」という意味でも、「次世代スターのオーディション」という意味でも、業界内の注目度は高いのではないか。