厚生労働省が発表している「平成28年 国民生活基礎調査の概況」によると、病気やけがなどで何らかの自覚症状のある者(有訴者)は、人口1,000人当たり305.9人で、およそ10人に3人は体に何らかの不調を訴えている計算になる。

その有訴者が抱えている症状の上位にランクインしているのが肩こり。男女別の数字で見ると、男性は人口1,000人当たり57.0人が、女性は同117.5人が肩こりに悩まされており、男性では腰痛に次いで2位、女性では1位となっている。パソコン作業が多いデスクワーカーらにとっては、慢性的な肩こりは悩みの種の一つだろう。

そんな厄介な肩こりの症状が和らげば、毎日のQOLも少なからず改善するはず。そのためには、具体的に何をすればいいのだろうか――。今回は、整形外科専門医の長谷川充子医師に肩こりの原因や、こり解消のヒントなどを教えてもらった。

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    肩こりに悩むビジネスパーソンは多い

日本人の多くが毎日感じている肩こりは、正式な病名ではなく、明確な定義もない。ただ、「首から肩関節にかけて、また首から肩甲骨、背中にかけての部分の筋肉の硬くなった状態」を肩こりと認識している人が少なくないのではないだろうか。

ところで、そもそもなぜ肩がこるのだろう。肩こりのような症状を起こす疾患は多岐にわたるが、それとは別に私たちが訴えている肩こりの大半は、「構造上の原因」と「日常生活での姿勢」などの影響が大きいのではないかと長谷川医師は指摘する。

「構造上の観点で言えば、肩甲骨までを含めた上肢(腕全体)は、体幹(体)にぶら下がっています。前後・左右・上下に動く、全身の関節の中で最も可動域の広い肩関節や、肩甲骨を含めた上肢が付いており、しかも肩甲骨は肋骨の上に乗っているというより、斜めにかぶさっているような状態です。脊椎から吊り下げられた吊り橋のようなイメージで、それを支える筋肉が張った状態が肩こりと考えてよいと思います」

この筋肉は常に肩甲骨から指先の重みを支えている筋肉なので、こりやすい条件がそろった構造にあるという。

「日常生活での姿勢に関しては、仕事ではデスクワークに限らず、『ある一定の姿勢』や『手を動かす作業といった、負担のかかる姿勢を続ける』などが原因となっていると考えられます。また、精神的に緊張状態が続くことも原因となります」と長谷川医師は話す。

長時間のスマホいじりは肩こりを助長する

スマートフォン(スマホ)全盛の近年は、長時間かつ連続的なスマホ操作も肩こりを招いている恐れがある。スマホやパソコンを操作するとなったら、頭の位置が少し前傾になり、その状態を固定したまま画面を凝視し続けることになる。

そうなれば、必然的に頭を支える筋肉が常に緊張した状態になるため、スマホやパソコンの操作は肩がこりやすい姿勢と言える。また、小さな画面に集中することに伴う眼精疲労も加わるため、より一層肩こりを招きやすいという。