大みそか深夜から元日早朝にかけて、関東・関西を中心に多くの鉄道事業者が終夜運転を実施する。初詣や年越しイベントに出かける人のためのサービスだ。ところで、ICカード乗車券を使っていると気づかないけれど、近距離きっぷには「発売当日限り有効」「下車前途無効」と書いてある。電車に乗ったまま、0時を過ぎても大丈夫だろうか。

たとえば、最寄りの駅で23時30分くらいにきっぷを買い、23時40分くらいに改札を通り、23時50分発の電車に乗って、0時を過ぎた場合だ。0時10分に目的地の駅について、近くの神社に初詣。これは可能か?

  • 近距離きっぷには「発売当日限り有効」「下車前途無効」の文字が入っている

答えは「可能」。大みそかに関係なく、普段の日でも0時を過ぎて「発売翌日」になっても目的地の駅まで利用できる。これは多くの鉄道事業者で認められている。そうでなければ0時をまたがって走る終電を使いづらい。

JR東日本の場合は「旅客営業規則第155条」に明記されている。

第155条
入場後に有効期間を経過した当該使用乗車券は、途中下車をしないでそのまま旅行を継続する場合に限って、その券面に表示された着駅までは、第147条の規定にかかわらず、これを使用することができる。この場合、接続駅において設備又は時間の関係上、旅客を一時出場させて、列車に接続のため待合せをさせるときは、指定した列車に乗り継ぐ場合に限り、継続乗車しているものとみなす。

この条文では「継続乗車」と呼ばれている。用語を解説すると、「入場」とは改札口を通って駅ナカに入ること。無人駅では列車に乗ること。「下車」は列車を降りることではなく、駅の改札口から外に出ること。目的地の無人駅で列車から降りること。ただし、無人駅が目的地の駅ではなく、同じ会社の路線に乗り換えるためにいったん降りたという場合は下車ではなく、乗車が継続中とみなされる。

「途中下車」とは、目的地の駅に着く前に乗車券の経路の途中駅で下車すること。第147条は乗車券の基本的な効力を示した条文だ。項目はいくつかあるけれども、「乗車券類は、その券面表示事項に従って1回に限り使用することができる。」が該当する。この場合は「きっぷに下車前途無効って書いてあっても、途中下車をしないでそのまま旅行を継続する場合に限って着駅まで行っていいよ」という意味になる。

「接続駅~」の文について、まず「接続駅」は列車を乗り継ぐ駅。本来なら「下車前途無効」だから、途中下車すると無効になってしまう。しかし、接続駅で終電になってしまい、始発まで時間がある場合は「駅から出て外で時間を潰してきていいよ」という意味になる。ただし、「指定した列車に乗り継ぐ」が条件だから、駅員に申告して、次に乗る列車を指定してもらわないといけない。常識的に考えて始発列車となる。なにか用事をして滞在した場合、目的があったと見なされて、その駅が下車駅と解釈される。

では、大みそか特有の事例として、初日の出を見に行くような場合はどうか。都内の最寄り駅を22時台に出発して、駅ナカで食事をして横須賀線に乗り換え、久里浜駅に朝の5時台に着く。そこから東京湾フェリーで初日の出クルーズ……って、フェリーは関係なかった。要するに、普段の終電時刻を過ぎて、朝の5時台に着くような乗り方だ。もちろんこれも大丈夫。第155条に定められた範囲内だ。

さらにいうと、12月31日の始発列車に乗って、東京近郊区間内の大回り乗車にチャレンジすれば、1月1日の終電まで乗車できると解釈できる。発売当日限り有効だけど、実質的には2日分使える。現在、大回り乗車は距離が長く、1日では足りない。そこで、この制度を使って大回り乗車の最長ルートに挑戦する人もいる。

ただし、これは普通乗車券について定めたルールで、割引きっぷなど独自の条件が定めてある場合、第155条に当てはまらない場合がある。たとえば「青春18きっぷ」では、

夜行列車など翌日にまたがる列車にご乗車の場合は、0時を過ぎて最初に停車する駅まで有効です。ただし東京、大阪近郊の電車特定区間内では終電車まで有効ですが、特定区間外への乗車については、列車の停車駅パターンにかかわらず、特定区間内の最終駅から下車駅までの運賃が必要となります。

とある。終夜運転は「終電車」の後に「臨時電車」を運行すると解釈できるから、「青春18きっぷ」は電車特定区間内の定期運行の終電車まで利用可能、前日分の効力は臨時電車には及ばない。

0時またがりの可否なんて、IC乗車券を使っていると意識することはない。紙のきっぷでも券面を見ず、無意識に0時を過ぎていただろう。もし、きっぷの券面で「発売当日限り有効」「下車前途無効」の文字を見つけて不安になったら、旅客営業規則155条を思い出そう。あるいは「継続乗車」という言葉だけでも覚えておきたい。