鉄道線路で、レールやマクラギの下の部分を道床という。道床にはバラストと呼ばれる石が積み上げられている。バラストはどれも似たような形をしているけれども、少しずつ形が違う。似たような石を採取しているのではなく、山の中の岩盤を切り出し、砕いてバラストに適した石を作っている。

線路に敷くバラストはいかにして作られている? (写真はイメージ)

東海道新幹線やJR在来線、中部地方の私鉄などにバラストを供給している会社に聞いた。まず、岩盤にダイナマイトを仕掛けて、大きな塊の岩を取り出す。ダイナマイトといっても「ドッカーン!」と爆発させるわけではなく、「ポン!」という感じで、岩盤にひび割れを作る程度だという。切り出した岩をショベルですくい上げてダンプカーに乗せ、山の麓の砕石プラントへ運ぶ。

プラントで機械を使って岩を砕いていく。ただし、初めからバラスト用に砕くというわけではない。砕いていくうちに、さまざまな形の砕石ができる。その中から鉄道用に適したバラストを選別して貯めておき、鉄道事業者の要請を受けて必要な量を納入する。ざっくりと説明すると、このような流れになっているそうだ。

鉄道用に適したバラストは拳骨のような形をしており、細長い石や扁平な石は不可。大きさは60mm~20mmで、適度な硬さが必要。石の種類としては安山岩や玄武岩などの火山岩で、火山帯が広く分布する日本ではどこの山にでもある石といえる。ただし、組成によって密度が違うため、上質な岩盤を見極める必要がある。

バラストを生産する山

全国的にバラストで有名な山やブランドがあるわけではなく、ほとんどの鉄道事業者が最寄りの石材メーカーから購入しているそうだ。重いものを運ぶには輸送経費もかかるから、遠くから取り寄せるという性質のものではないらしい。

山から砕石をすべて取ってしまったら、バラストが取れなくなってしまうのでは……と不安になるけれども、いまのところ埋蔵量は十分あり、心配する時期は何十年も先とのこと。そのときは新しい山を購入することになるのだろう。もっとも、バラストの需要は減っており、リニア中央新幹線にバラスト軌道はないし、在来線なども新路線ではコンクリート軌道が多くなった。

既存の鉄道も立体交差化で高架区間になるなど、バラストも使わなくなってきている。最近は高架区間でも消音のためにバラストを使う「弾性バラスト軌道」も使われているけれど、従来の道床用バラストに比べると使用量は少ない。

じつはバラストは意外と長持ちで、東海道新幹線用でも最長で30年は使うという。私たちが見かける保線作業は、バラストの突き固め、いわばメンテナンスだ。古いバラストを新しいバラストに交換する作業はめったに見られない。

※写真は本文とは関係ありません。