日本一長い定期普通列車といえば、JR北海道が根室本線で運行する列車番号「2429D」が有名だ。滝川発釧路行で、走行距離は308.4km。所要時間は8時間27分。滝川駅・釧路駅を含めて48の駅を経由する。8月30日に実施されたJR北海道のダイヤ改正で、滝川駅発車が1分早く、釧路駅到着が1分遅くなった。とくに宣伝はなく、こっそり最長時間記録を更新していた。2429Dの「日本一長い」は、この所要時間を示している。走行距離ではない。

広島地区の115系電車

日本最長距離を走る定期普通列車は、山陽本線の岡山駅16時17分発、新山口駅22時2分着の列車番号「371M」だ。走行距離は315.8kmで、2429Dより11km長い。所要時間は5時間45分。岡山駅・新山口駅を含めて71の駅を経由する。停車駅も2429Dより多いけれど、電車だから速度が高いため、所要時間は短くなっている。それにしても5時間45分は長い。ぜひ一度、「完全乗車」にチャレンジしてみたい。

この371Mに、新型電車227系が起用されるかもしれない。227系はJR西日本が広島地区に導入する予定で、3両編成64本、2両編成42本、合計276両を製造予定。国鉄時代から使い続けた115系電車と置き換える予定だ。そして371Mは現在、広島地区に所属する115系電車が担当している。つまり、115系がすべて227系に置き換えられると、自動的に227系が日本最長距離の定期普通列車を担当するものと思われる。

227系にならない可能性もある…

ただし、すぐには227系にならないかもしれない。その理由は3つ。信号保安装置と、車両の担当替えの可能性、そしてダイヤ改正による運行区間の短縮だ。

227系はJR西日本が導入する新しい信号保安システムを搭載している。この保安システムは車両にデータベースを搭載し、地上設備と連動して速度制限を実施したり、ホームの左右を乗務員に伝えてドアの誤操作を防止したりする。その地上設備は白市~広島~岩国間で優先的に整備される。この区間に設定されている列車が多いため、227系はまず、この区間に優先的に導入されるだろう。

車両の担当替えについては、現在、広島・岡山地区では115系の他に、113系や117系なども使われている。371Mにつかわれた115系が引退した後、227系ではなく、117系に担当が替わる可能性も残されている。いずれ117系も廃車になるだろうけれど、それまでは227系にならないかもしれない。

日本最長距離の定期普通列車が消える可能性もある。じつは、山陽本線では371Mより前に、もっと長距離を走る定期普通列車があった。岡山駅発下関行きの1725Mで、走行距離は384.7kmだった。この列車は2012年3月のダイヤ改正で広島駅止まりとなった。長距離普通列車は全国的に減少傾向だから、早ければ2015年3月のダイヤ改正で、岡山発新山口行の定期普通列車は消えるかもしれない。

JR北海道は普通列車2429Dの「乗車証明書」を発行するなど盛り立てているけれど、JR西日本は山陽本線の長距離普通列車についてとくに宣伝していない。ちょっと寂しい。371Mに新型電車227系を導入して「日本一」をアピールしてくれたら、鉄道ファン以外にも珍しがって乗りに来てくれそうだけど、どうだろうか?