東海道新幹線の普通車の座席配置は3列+2列になっている。0系や100系はすべての座席の幅が同じだったから、3列シートの真ん中のB席は窮屈だった。しかし、300系量産車以降、B席の幅が他の座席より30mmだけ広くなった。窓側や通路側は430mm、B席は460mmだ。
300系が引退した現在も、700系とN700系の3列座席はB席のほうが広くなっている。ただしN700系では、それまでの形式と比べて窓側と通路側が10mm広くなり、幅440mmとなった。B席は460mmと変わらないから、その差20mmに縮まっている。いずれにしてもB席のほうが広いから、体格の良い人はB席のほうがゆったりとくつろげるだろう。
同じ料金でもB席のほうが広いからお得と言えそうだけど、窓際のほうが楽しいと思う人は多いし、通路側のほうが遠慮なくトイレに立てるから良いという人もいる。どの席にも一長一短あるわけだ。
N700系にはちょっとだけ狭い普通車がある
ところで、N700系は普通車の一部で従来より座席が狭くなっている。その差はわずかとはいえ、ちょっと損をした気分になるかもしれない。新しい車両のほうが居住性は改善されているはずなのに、これはいったいどういうことだろうか?
ちょっとだけ狭い普通車、それは先頭車両の1号車と16号車だ。狭い部分は座席の前後の間隔である。他の普通車は前後の間隔が1,040mmで、これは100系以降から変わらない。しかし、N700系の1号車と16号車だけは1,023mmで、17mmだけ狭くなっている。その理由は先頭車の形状に関係している。
新幹線の先頭車は、伝統的に流線型になっている。空力やトンネルに入るときの衝撃を軽減するためで、新型車両が出るたびに改良されてきた。N700系の先頭車は、700系の先頭車形状を進化させた形で、「エアロ・ダブルウィング」と呼ばれている。その長さは10.7mで、700系の9.2mより長い。しかし車体の長さは同じだから、流線型部分を長くするには客室の前後長を短くする必要があった。
つまりN700系の先頭車は、700系の先頭車より客室が短い。その上で、N700系と700系は座席数を同じくした。そのために座席の間隔を縮めたというわけだ。指定席を取るなら16号車、自由席に並ぶなら1号車は要注意かもしれない。もっとも、N700系は窓側の各座席にコンセントがあり、ノートパソコンを使う人も多い。そんな人の中には、テーブルが近くて使いやすいという人もいる。いずれにしても、「N700系の1号車と16号車は前後間隔が狭い」は覚えておいたほうがいいだろう。
九州直通版のN700系は先頭車も同じ前後間隔
N700系といえば、山陽新幹線と九州新幹線を直通するタイプもある。「みずほ」「さくら」に使われている7000番台や8000番台だ。こちらの先頭車の座席間隔は、他の車両と同じ1,040mmで、他の普通車と同じになっている。そのためにわざわざ定員を減らしたからだ。東海道・山陽新幹線のN700系先頭車の座席番号は1番から13番までだが、九州新幹線直通タイプは12番までとなっている。
九州新幹線に限定した場合、「さくら」「つばめ」の自由席に乗るならN700系より800系のほうがゆったりしている。指定席・自由席ともに2列+2列の配置で、座席の幅が広く取られているからだ。