元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きなギャンブルは「人と会うこと」です。

これから簡単な質問をします。答えを考えても良いですし、考えずに先に進んでも構いません。

質問1

あなたは、今、ギャンブルで3万円勝ちました。ABどちらかを選んでください。

A 50%の確率で1万円もらえるが、50%の確率で1万円失う。
B 何もしない。

多くの方が、Aを選ぶのではないでしょうか。では、この質問ではどうでしょう。

質問2

あなたは、今、ギャンブルで3万円負けました。ABどちらかを選んでください。

A 50%の確率で1万円もらえるが、50%の確率で1万円失う。
B 何もしない。

この質問になると、多くの人がBを選びます。ちなみに、ギャンブル依存症の場合は、質問1でも質問2でもAを選びます。どちらの質問でもAとBの期待値は0なのでどの選択をしても合理的ですが、ひとつひとつの期待値だけでなく一定の期間の収益が選択に影響を与えるので、3万円を得ている人は1万円失うことが怖くなくなります。

前の成功によりバイアスがかかるわけです。では、次の2つの質問の場合はどうでしょう。

質問3

A 確実に1万円もらえる。
B 50%の確率で2万円もらい、50%の確率で何ももらえない。

質問4

A 確実に1万円失う。
B 50%の確率で2万円失い、50%の確率で何も失わない。

質問3も4も、期待値はAB一緒です。質問3は1万円で、質問4は-1万円。しかし、質問3では、堅実なAを選ぶ人が多く、質問4ではBを選ぶ人が多くなります。人は、損失を嫌がるのでギャンブルをしてでも回避しようとします。

お金の価値というのは、相対的な価値と絶対的な価値があります。相対的な価値とは、100万円持っているおじさんは100円をもらっても喜ばないけれど、5歳の子どもは100円をもらって大喜びするような場合に現れます。人によって100円の価値は異なるのです。

つまり、2万円がもらえることは1万円もらえることの2倍嬉しいかといえばそんなことはなく、個人差はありますが、せいぜい1.8倍くらいになります。これを考慮すると、50%の確率の2万円の期待値は、確実な1万円の期待値より低くなります。だから、多くの人が確実に1万円をもらえるほうを選ぶのです。

質問4では、人はBを選ぶ傾向にあります。確実にお金を失うより、50%の確率で失わない可能性があるのなら失うお金が2倍になるリスクを取ってでも、ギャンブルを選ぶ。人は、損失についてはリスク追求的になります。ABの期待値が同じでも、お金を得るのか失うのかで選択が変わるのです。

若手芸人の確定申告でも同じようなことが起こっています。7割くらいの若手芸人は確定申告をしていません。でも、劇場で噂が広まって「どうやら確定申告をすると、1年分の源泉徴収税額が還ってくるらしい。5万から10万円が3週間後に手に入るらしい」とぼんやり認識しています。でも、税務署には行きません。5万円は欲しいけれど、億劫に感じて腰が上がらないのです。

では、「5万円くれ」と言うとどうでしょう。絶対にくれません。きっと、1000円でもくれないでしょう。そんなことはしませんが、もし1000円を無理やり奪ったら、地の果や地の獄まで追ってくるでしょう。1000円はくれないけれど、5万円は平気で諦めるのが若手芸人です。5万円の収入は放棄するのに、1000円の損失をとてつもなく嫌がる。それが人の非合理的な当然の行動です。

自分を律することで、そういった行動を改めれば、資産を増やすことができます。お金は、非合理的な行動を嫌がるので、合理的な行動を選択すると集まってきます。ただ、どんな成功者だって非合理的な行動をしてしまいます。だから、ルールを作り、自分を縛ります。みなさんも目標のために、ルールを作ってみてください。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら