こちらの連載は、時事ネタや身近な税法上の取り扱いをさんきゅう倉田がやわらかく解説。みなさんを絶好調時のムドーを一撃でがさ入れできるくらいの税金マスターにします。


元 国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな本は、『通帳(bank book)』です。

「個人事業者のやつはいいなあ、経費が認められて。スーツを買っても経費、本を買っても経費、タクシー代も経費、仕事と関係あるものはみんな経費、祝儀も香典も経費、そういえばこの間、3つ向こうの長介さんが取引先の社長の娘を嫁にもらってたけどそれも経費らしいぞ」

そんな話を会社員の人から聞くことがあります。きっと、知人や友人に個人事業者がいて、「経費がたくさんあるから、全然税金払ってないよ」などと聞いているのでしょう。不公平ですよね。しかし、会社員やパート・アルバイトのような給与所得者でも、経費が認められるようになったんです。それが、『特定支出控除』なのです。

特定支出控除とは?

国税庁は、次のように言っています。

「給与所得者のその年の特定支出の額の合計額が、『特定支出控除額の適用判定の基準となる金額』を超えるときは、確定申告によりその超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができる」
(国税庁HP「No.1415 給与所得者の特定支出控除」より)

つまり、「経費にできる支払いがありますよ、会社員の方でも。確定申告してね」と言っています。特定支出控除をうけるためには、「給与所得控除の2分の1」を超える経費が必要です。さて、給与所得控除とは何でしょう。

給与収入から給与所得控除を引いたものが、給与所得になりますので、源泉徴収票でいうと、

給与所得の源泉徴収票イメージ

この2つが給与収入と給与所得。給与収入ー給与所得控除=給与所得なので、源泉徴収票を見れば算出できます。また、源泉徴収票がなくても、下記の表から計算できます。

給与収入と給与所得控除額

会社員が経費にできる『特定支出』の内訳

会社員が経費にできる特別支出は下記の8つです。

(1)通勤費……通常必要であると認められる通勤のための支出
(2)転居費……転勤で引っ越すための支出
(3)研修費……仕事に必要な技術や知識を得るための研修の支出
(4)資格取得費……仕事に必要な資格を取得するための支出
(5)帰宅旅費……単身赴任で、家族のいる自宅に帰るため支出
(6)図書費……仕事に関係する本
(7)衣服費……制服、事務服、作業服の費用
(8)交際費……接待やプレゼントの支出

なお、特定支出控除を受けるときには下記の4点に注意しましょう。

【注意事項】
・勤務先に、仕事に直接必要な支払いであるという証明書を書いてもらう
・勤務先から補填されたお金、例えば、通勤手当とか転居手当とかの金額は、あなたが負担してないのでのぞかれる
・(6)(7)(8)は、合計65万円までしか特定支出として認められない
・確定申告をする

特定支出控除を申請するには、下記の流れを抑えておきます。

【一年間の流れ】
(1) 仕事に関する支払いの領収証などをためまくる
スーツを買ったり、靴下を買ったり、ネクタイを買ったり、シャツを買ったり、出張したときに会社が電車賃をくれなかったり、個人的に接待で飲んだorプレゼントをあげたり、勉強のために本を買ったりしたら、領収証を取っておくか、記録をつけておきましょう
(2) 年始に、支払いを合計してみる
(3) 給与所得控除の金額を計算してみる
(4) (2)-(3)×1/2が0より大きいなら、確定申告してみる
(5) 還付金を受け取ってみる

以上を踏まえて、今年から特定支出控除を意識してみてください。「領収証捨てちゃったよお!」って方、クレジットカードの明細など少しでも記録が残っている可能性があれば、諦めずに。

執筆者プロフィール : さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら