元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな副業は「お笑い」です。

確定申告真っ只中。働き方改革で、副業・兼業を国が推し進めています。この記事をご覧の会社員の方の中には「副業」とは言わないまでも、本業以外でちょっとした仕事をして報酬をもらった方がいるのではないでしょうか。ちょっとした仕事で昨年中に受け取った報酬は、昨年の収入に加算して、確定申告が必要です。

会社からもらっている1年分の給与と合わせて確定申告をする必要がありますが、給与と報酬を受け取るためにかかった経費の金額によっては、確定申告で所得税が還付になるかもしれません。

副業の報酬はほぼ事業所得か雑所得になる

あなたが副業をしている場合、副業で受け取った報酬は、ほとんどのケースで、事業所得か雑所得になります。

どちらも、年間で20万円以上の所得があれば、確定申告が必要です。逆に、20万円以上の所得がなければ、確定申告を要しない。しかし、20万円に満たないけれど、確定申告をした方が得になることは、ままあります。月で2万円ほどの副収入があれば、確定申告を検討してはいかがでしょうか。

この場合の「所得」とは「収入から経費を引いたもの」です。例えば、副業で講演やライティングを行った場合は「報酬」としてお金をもらうと思います。これが「収入」です。そして、この収入を得るためには、様々な経費がかかるはずです。講演であれば、打ち合わせや講演会場への交通費、資料としての書籍代が考えられますし、ライティングのためにパソコンを購入したり、取材をしたりすれば、その都度支払いがあります。これらが「経費」です。

1年分の収入から、1年分の経費を引いたものが、1年分の所得です。副業の場合は、これが20万円以上なら確定申告をしなければいけません。しかし、確定申告をしたからといって、必ず納税になるわけではないのです。

報酬は、多くの場合、所得税の源泉徴収をされて支払われます(仕事の内容によって、源泉徴収されるか、されないかが異なります)。つまり、報酬から所得税が天引きされるわけです。

この所得税は、大体10%です。なぜ、大体なのかは長くなるので割愛します。取引先の手によって、報酬の10%が天引きされていますが、ここに経費は反映されていません。取引先は、あなたが報酬を得るためにどのくらいの経費を使ったか、把握できないからです。いや、もちろん、あなたに聞けばわかりますが、そんなことをするのは非常に億劫ですし、やぼったいわけです。なので、取引先はあなたに支払った報酬に10%の税金をかけていますが、本当は報酬から経費を引いた所得に税金をかけるのが、所得税の正しい計算です。

この所得税の正しい計算を行うために、確定申告をします。例えば、100万円の報酬があって、10万円源泉徴収されたとします。でも、経費が60万円かかったら、所得は40万円です。40万円の所得に対して、どのくらいの所得税がかかるかは、(累進課税制度※なので)あなたの給与所得や他の所得がいくらあるかによって違うのですが、所得税が5%や10%の方であれば、所得税が還付される可能性が高いです。

累進課税とは、所得が高くなればなるほど、段階的に所得税率が上がっていく制度のこと。低い人は5%、高い人は4,000万円を超える部分は45%。

もちろん、経費が全然ない、あるいは、10%より高い所得税率の方なら、確定申告をすることで、納税になることもあります。しかし、それは、申告納税制度を採用している日本では、仕方のないこと。納税になるからといって、確定申告をしないという選択肢はありません。

確定申告を期限内に行わなかった場合「無申告加算税」という罰金や、延滞税という利息を払うことになります。初めから、期限内に正しく申告するのがおすすめです。副業があれば確定申告を。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら