元国税職員さんきゅう倉田です。好きな 不合理な行動は「絶対ひとりで食べきれないのに、特売の野菜を買ってしまう」です。

一部の学問は、人間が合理的な行動をするという前提で思考や実験が行われています。しかし、人間は明らかに不合理です。行動は論理だけでなく、心の影響を受けるからです。

そのことを知っている企業は、顧客の消費行動を変化させるべく、さまざまな取り組みを行っています。あなたが購入した商品は、あなたが主体的に買ったのではなく、買わされたのかもしれません。

今回は、お金に関する効果や性向を紹介します。

(1)ハウスマネー効果

お金の価値はそのお金を得るまでにかかったコストの影響を受ける、という考え方です。

働いて得た1万円は貯金するけれど、たまたま懸賞に当たって得た1万円はすぐに使ってしまいませんか。1万円の社会的な価値は変わらないのに、人間の行動は異なる。不合理です。

しかし、不合理な行動をするとき、その選択が不合理であることを理解している人は多くありません。

ハウスマネー効果の存在を知っていることで、「これは、不合理な行動かもしれない」と気付き、行動を変えることができます。不合理な行動は、あなたの資産を減らしてしまう危険があります。

(2)サンクコスト効果

それまでに支払ったコストを気にするあまり不合理な行動をしてしまう、という考え方です。「コンコルドの誤謬」で有名です。

身近な例では、サッカーのチケットを買ってスタジアムに行ったけれど、チケットを紛失してしまい入れない、せっかくここまできたし、既にチケット代を払っているから、もう1枚分のお金を払ってでも観戦する。サンクコストの考え方ではこの行動を不合理としているようです。

これは、過去の行動やコストは将来の選択に影響を与えるべきではないという考えに基づいています。ただ、精神衛生上どちらが良いかまで考えると、不合理とされる選択を実行してもよいと個人的には思います。

大切なのは自分の行動が正しいのか正しくないのか理解することです。

(3)アンカリング効果

人はアンカーによって印象を操作され行動が変化する、という考え方です。鰻屋さんで松竹梅3つの価格が設定されている場合や、プライスが「半額1万円」などと表示されている場合に効果が現れます。

2種類の価格しかない場合と比べると、3種類の価格がある場合は一番安い価格を選ぶ人が少なくなるそうです。また、「1万円」のプライスより赤字で書かれた2万円に2重線を引いて「半額1万円」と書かれたプライスをお得に感じませんか。

お店はみなさんの行動を変化させるために、アンカーをおろしています。

(4)テンション・リダクション効果

心理的緊張から解放された後は行動が不合理になる、という考え方です。

ネット通販でいろいろな商品を見て、価格や性能を比較し、生活費から捻出できる予算を検討して、悩みに悩んだ末に商品を購入したのに、「これを買った人はこんな商品も購入しています」と言われて、ついでに買ってしまったことはありませんか。

一つ目の商品はたくさん検討したのに、勧められた商品は速やかに決断するなんて矛盾しています。人がそのような行動を取ることを理解しているので、事業者は「これを買った人は〜」などのメッセージを表示しています。あなたが買ったその商品、本当に主体的に選んで買いましたか。

(5)フレーミング効果

同じ情報であっても焦点の当て方によって人の意思決定は変わる、という考え方です。「99%の確率で成功する手術」より「1%の確率で失敗する手術」の方が患者が手術を承諾する割合が減るそうです。1%であっても「失敗」と言われると恐ろしくなって、手術を避けてしまう。

フレーミングによって人の行動が変わるため、数字を使って嘘をつく人はたくさんいます。割合が重要なのに、金額だけに焦点を当てるような案内も見られます。

マルチ商法の人が、「このビジネスをすれば、私の先輩のように1,000万円稼げます」と言っているのを聞いたことがあります。そのビジネスで搾取されている人のうち何人が1,000万円の年収を得られるかという点に言及せず、金額だけ示して釣ろうとするなんて邪悪です。

5人に一人ならあなたも1,000万を稼げる可能性がありますが、50人に一人なら他の仕事をした方がいい。数字を示された場合は、焦点をどこに置くべきか自分で考える必要があります。

人間は不合理です。ぼくはそのことを理解して、合理的な行動を取るように心がけ、他人の不合理を許容できるように日々努めています。

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