元国税職員さんきゅう倉田です。好きな奉行は「勘定奉行」です。
ぼくは吉本興業で芸人をしています。芸歴は12年目になりました。NSCを含めると12年以上お世話になっています。
会社が隆盛してくれたら嬉しいし、それはタレントにもメリットがあります。しかし、ここ数年はいろいろありました。会社とタレントの関係も変わってきています。
若手芸人も会社と個別の契約をするようになったし、自身でマネジメントができる人は契約内容を変えたり、独立したりしました。それぞれの働き方があるし、双方納得の上なので良いと思います。何も思うことはありません。
しかし、会社側がタレントに寄り添ってくれるようになったことを悪用して、無理をする芸人がいました。
会社とタレントの個別の契約内容は知りません。ただ、ある芸人は、一定の金額以下ならば与信調査を依頼した上で個人的に取引をして良いという契約をしています。
小さい金額なら会社の取り分は0でいいよ、ということですね。とてもタレントに優しい契約です。
しかし、そういうマネージャーを介さない取引は、自分でマネジメントができる人がやるべきであって、お笑い以外何もできないタイプの芸人はやるべきではありません。
例え、報酬の取り分が5:5になったとしても、マネージャーの交渉によって振り込まれる金額は多くなるかもしれないのに。
目先のお金のことを考えず、大極的に見て判断してほしいと思い、筆を執りました。
とあるケーキ屋からの広告の依頼。ギャラの提示がなかった
ある芸人が、知人の紹介で有名なケーキ屋の社員と会いました。社員は、ケーキを渡したいから本社まで来てほしいと芸人を誘いました。
芸人が先方に出向くと、急に、自社の店頭広告に出てほしい、日付は来週の△△で、場所は□□山にしましょう、他の芸人さんも連れてきてください、と話が進んでいきます。
芸人は面食らってしまい、ギャラのことなど聞かずに了承だけして帰ってきてしまいました。
そう、ケーキ屋の社員は、広告の出演依頼をしたのに、ギャラの金額を言わなかったのです。こういうときにギャラの話をしない人は、払うつもりがない人だと個人的経験から思います(個人事業者になって7年、EXPはかなりたまって、レベルも上がりました)。
結局、芸人の方からギャラのことを言い出せないまま、撮影当日を迎えてしまいます。
そこへは他の芸人も数名連れて行き、3時間ほど撮影をして、ひとり5,000円をとっぱらいでもらって帰ってきました。
たったの5,000円ですよ。お年玉じゃないんだから。
ぼくは友人として、すごく残念に思います。
マネジメントができない芸人がすべきこと
思うに、マネジメントというのは誰にでもできるわけではありません。マネージャーの介入によって取り分が減ることにだけ焦点を当てるのは短絡的で愚かです。
今回の件でいえば、ギャラの提示がない時点で軽んじられています。そんなことあり得ない。だから、タレント自身がギャラの交渉をしなければいけませんが、それはすこぶる印象が悪い。だから、マネージャーの存在が重要です。
マネージャーが正しい金額を提示して、タレントを丁重に扱うように促してくれます。
今回、当該芸人は「間に入られてギャラが減るのが嫌。1万円もらえればいいや」と言っていました。
自身の写真を使われてたった1万円でいいのだそうです。だったら、マネージャーにやりとりをすべて一任して、報酬を3万円くらいになるよう交渉してもらい、それを折半すればいい。結局、5,000円しかもらえていないし、きっとギャラ無しでも何も言わなかったと思います。そもそも、事前にギャラの話をしない仕事などありません。
撮影にはスタジオを借り、カメラマンも呼んでいます。ケーキ屋には予算があるわけです。それなのに、演者に5,000円しか払われないなんておかしい。
でも、マネジメントができないから、そのことを指摘することもなく彼は帰ってきてしまいます。きっと「本日はありがとうございました」などとお礼のLINEをして、ますます相手にその程度のタレントだと思われたことでしょう。
ぼくは、友人が搾取されることが、自分のことのように悔しいのです。
目先のギャラを得るためだけに直接の取引をすることを推奨しません。報酬の交渉をしたり請求書を出したりメールを返したり決済の督促をしたりするコストを考えれば、マネージャーに間に入ってもらうのが最善だと思います。
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