元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな小説の書き出しは「個人事業者もすなる、日記といふものを、会社員もしてみむとて、するなり」です。

前回から、持続化給付金に関連して、事業所得と雑所得の違いについてまとめています。

雑所得と事業所得を見分けるには?

  • 元国税芸人さんきゅう倉田の「役に立ちそうで立たない少し役に立つ金知識」  - 第166回「フリーランスの仕事は雑所得と事業所得どっち ~後編~」

個人的には、フリーランスや個人事業者など、その仕事をメインでやっているのなら事業所得、会社員をしながら副業としてちょっとやっているのなら雑所得になると思います(絶対じゃないよ)。 では、アルバイトをしている芸人さんはどうでしょう。例えば、収入がアルバイトで年間200万円、芸人で100万円だったとします。お金だけで見ると、メインはアルバイトです。税務署で確定申告をしようと思ったら、職員の人に「雑所得ですね」と言われるでしょう。実際に、多くの芸人がそう言われていますが、税務署の人の判断は間違っていないと思います。 一方で、芸人の仕事はアルバイトなしでは続けられません。活動としては、お金にならないライブがほとんどですが、趣味ではありません。メインの仕事は芸人です。衣装や交通費などの経費もたくさんかかります。 だから、アルバイトで生計を維持していても、職業はフリーターではないはずです。自信を持って「芸人です」と言って良い。申告も、事業所得で良いと思います(趣味みたいな活動しかしていない芸人は別です)。 なお、事業所得とは、このように定義されています。

自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得

ぼくは、自分の講演会などで、社長にいつもこの説明をしています 反復継続や客観的な社会的地位がポイントですね。自分の仕事が事業所得に該当するかどうか迷ったら、上記の定義を思い出してください。

事業所得の良いところ、損益通算

持続化給付金の対象か否か以外にも、事業所得の優れた点がいくつかあります。 それは、損益通算ができること。損益通算とは、赤字を他の所得と相殺できる制度です。 フリーランスとして仕事をしていると、事業開始当初などに収入より経費が多くなることがあります。そんなときは、アルバイトもするかもしれません。 損益通算を使えば、フリーランスとしての赤字とアルバイトでもらったお給料を相殺して、所得税を還付にすることができます。 アルバイトをする芸人たちは、この還付金が3月頃振り込まれることから「春のボーナス」と呼んでいます。

フリーランスなのに確定申告をしていない人は… フリーランスとして仕事をしていれば、みんな確定申告をします。していない方は、いますぐしてください。過去5年分遡ってできますし、2月3月の確定申告期間でなくとも申告できます。 税務署に行っても「遅いですよ! 」と怒られることもないし、還付なら罰金も利息もありません。条件さえ揃っていれば、自宅からパソコンやスマホで申告できます。初めての方は、一度、税務署に行くといいかもしれませんね。ただ、予約が必要な場合があるので、まずは管轄の税務署に電話をしましょう。 「○○区 税務署」などと検索すると表示されます。ぼくの初めての確定申告は大学4年生のときです。自宅のパソコンで申告書を作成し、印刷して、郵送で提出しました。大学生のぼくでも調べながらひとりでできたんだから、社会人のみなさんであれば容易かもしれません。

事業所得と雑所得、事業所得と給与所得の違いは曖昧です。はっきりと区別できない場合があります。だからこそ、持続化給付金の条件が緩和されたのだと思います。 今回の騒動は、自分の得たお金が、どの所得に該当するのか今一度考え、所得ごとのメリットデメリットを学んでいただく良い機会になったと思います。

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