元国税局職員さんきゅう倉田です。好きな調整は「年末調整」です。

12月です。12月といえば、なんでしょうか。やっぱり、年末調整ですかね。

大人になると、サンタクロースからプレゼントをもらうより、年末調整で還付金をもらう方が嬉しくなります。

さて、年末調整とはなんでしょうか。年末になると、何かを調整してくれるのでしょうか。働く人の9割が給与所得者(会社員、パート・アルバイトのことだよ)で、その人たちは12月になると、年末調整で還付が受けられます。一部、還付にならない人もいますが、ほとんどが還付です。

その還付は、国や自治体からではなく、勤務先の会社から、お給料のように振り込まれます。なぜ、振り込まれるのか。「別にお金を取られるわけではないから、よく分からなくてもいい」と思っている方もいると思います。

ぼくも、学生の頃はそう思っていました。でも、年末調整を理解することで、他のことをたやすく理解できるようになります。「関係ない」と思っても、少しずつ知識を増やしていっていただきたいです。

年末調整ってなあに?

会社は、みなさんに給料を払うときに所得税の源泉徴収を行っています。

(源泉徴収については、前回の記事を読んでね)

でも、1年間の源泉徴収は、その年に納めるべき所得税と同じになりません。なぜかというと、ちょっと多めに天引きしているからです。勤務先が、12月に所得税を計算すると、「ちょっと、天引きしすぎたなあ」となります。

このズレを調整する手続きが、年末調整です。あなたは何もする必要がなく、勤務先の会社が手続きをしてくれます。

ほとんどの方が、年末調整をしてもらえますが、一部、してもらえない人がいます。それが、「扶養控除等申告書を提出していない人」です。これは、10月か11月くらいに、会社に提出するように言われます。提出しないと、年末調整の対象となりません。

ただ、すべての勤務先で提出できるわけではありません。2カ所で働いていたら、1カ所でしか年末調整できません。物理的には提出できますが、源泉徴収される所得税の金額が変わってしまうので、提出してはいけません。

年末調整と確定申告って違うの?

世の中には、年末調整と確定申告を、混同している人がいます。惜しい。

 所得税のルールでは、働いている人(所得のある人)は確定申告が必要とされていますが、勤務先に年末調整をしてもらえれば、確定申告が不要になります。

だから、年末調整=確定申告と認識するのも仕方がありません。覚えておきたいのは、年末調整をしてもらった人でも、年末調整だけでは対応できない「何か」があれば、確定申告が必要だということです。

では、「何か」とは。

収入や控除です。会社からのお給料以外に、収入があれば申告が必要です。例えば、もう一つ勤務先がある、絵や執筆が得意で副業でそういった仕事をしているような場合です。

控除は、社会保険料(年金や健康保険だよ)や生命保険料、住宅ローン(2年目以降)など、一部のもの以外は、年末調整で対応できません。

災害に遭って雑損控除を受けるとか、医療費がたくさんあって医療費控除を受けるとか、iDeCoに入ったけど会社に書類を提出するのを忘れたとか、そういった場合も確定申告が必要です。

転職した場合は?

退職すると、年末調整が受けられません。源泉徴収票をもらって、次の勤務先に提出しましょう。すると、転職前の勤務先からのお給料と合わせて、年末調整してくれます。退職前に、源泉徴収票がいつもらえるか、必ず確認しておきましょう。

毎年必ずやってくる年末調整。意味を理解して、確定申告との違いを把握すれば、困ることはなくなります。年末調整で対応できない収入や所得があっても、慌てず、確定申告ができるように備えると良いと思います。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。法人の税務調査を行ったのち、吉本興業に。

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