近年、豪雨や猛暑など異常気象が相次ぎ、天候の急変に備える重要性が高まっています。昔から人々は空を見上げ、雲の形や動きから天気の変化を読み取ってきました。実際、雲の中には異常気象や自然災害の前触れを示すものもあります。大きく盛り上がる雲、魚の鱗のように並ぶ雲……一見美しく見える雲が天候急変のサインになることも。
今回は、気象予報士で空の写真家の武田康男氏による『知れば知るほどおもしろい 天気のはなし』(宝島社)より「集中豪雨」についてお届けします。
■広範囲にわたって水害を起こす
俗称「ゲリラ豪雨」と呼ばれる局地的大雨と違い、線状降水帯は、多数の積乱雲が連なるように並び、長時間にわたって激しい雨を降らせる現象である。
発生にはいくつかのパターンがあるが、特に注目されているのが「バックビルディング現象」だ。これは、湿った暖かい空気が海から流れ込み、積乱雲が列をなすように次々と生まれ、その列全体が少しずつ進みながら、同じ地域に雨を降らせ続ける現象。このような状況では、数時間にわたって猛烈な雨が続き、河川の氾濫や土砂災害などの深刻な被害につながるおそれがある。
積乱雲が1つだけなら、激しい雨は長くは続かず、その雲が通り過ぎれば空は明るくなる。しかし、線状降水帯のように積乱雲が列をなして次々と発生し、同じ場所にとどまり続けると、被害は広範囲にわたる。積乱雲の列は、長さが約50~300㎞、幅は約20~50㎞にも及び、台風や前線、地形の影響などにより、全国各地で発生する可能性がある。
梅雨の末期や台風接近時などに起こりやすく、気象庁でも予測精度を高める取り組みが進められている。




