テレワーク元年とも言われている2020年。多くの企業で制度導入が進む中、まだまだ利用している会社員は少ないのが現状です。そこでこの連載では、先んじてテレワークを導入してきた企業の一会社員を取材。テレワークを活用したさまざまな働き方を紹介していきます。

今回お話を伺ったのは、大同生命保険 品質管理課 係長の本間聡美さん。小学生と保育園児、2人の子どもを育てながらフルタイムで働く本間さんは、どのようにテレワークを活用しているのでしょうか?

  • 本間聡美さん(36)/大同生命 品質管理課 係長で2人の部下を持つ。小学2年生の長女、保育園年中の長男を育てるワーママ

どんなときに利用してる?

小学校のイベントが開催されるときや、子どもが病気になったときなどにテレワークを利用しているという本間さん。自宅で仕事ができるメリットを生かして、仕事と家庭を両立されていました。

「保護者会や音楽会など、小学校のイベントは平日昼間に行われることが多いので、そういうときに便利ですね。学校の用事って数十分程度のものが多いんです。テレワークを活用することで、それ以外の時間を仕事にあてることができます。子ども2人がインフルエンザに感染したときは、熱が下がっても登校できないので、連続して1週間利用させてもらいました。月によって、イベントや子どもの病気が重なって多く利用する月もありますし、全く利用しない月もあります」。

2013年の試験運用時からテレワークを利用し続けていますが、会社で働き方改革が進むにつれて、テレワークでの仕事も進めやすくなったそうです。

「出社日とテレワーク日で業務の振り分けを意識することはあまりありません。2013年当時は、紙がなくてもできる業務は、限られてしまう状況だったのですが、今はペーパーレス化が進んで、パソコン1つあれば大抵の業務はどこでもできるようになりました。オフィスではフリーアドレス制も導入しているので、働く場所が変わることにも違和感がなくなりました」。

  • 働き方改革の流れをテレワーク利用でも感じるという本間さん

1日のスケジュールと働き方の工夫

本間さんに教えていただいた出社日とテレワーク日のスケジュールを見てみると、やはりプライベート面のスケジュールに大きな違いがありました。

テレワークの日は往復2時間かけている通勤時間が浮くので、子どもと過ごす時間にあてています。宿題をいつもより丁寧に見てあげたり、なわとび練習に付き合ったり、料理に時間をかけたりしていますね

「平日は夫の帰りも遅く、普段は、朝から晩まで時間に追われて、常にダッシュしているような生活なので、疲れ果てて子どもと一緒に寝落ちしちゃうことが多いんですよ(笑)。でもテレワークの日は、精神的にも体力的にもだいぶ余裕があるので、子どもが寝た後にテレビを見たり、本を読んだりと、自分の時間も捻出できています」。

  • テレワーク日と出社日、それぞれの1日のスケジュール

2019年度からは自宅以外の場所でもテレワークが可能になったそう。場所を変えたり、環境を整えたりして、仕事とプライベートのメリハリをつけているといいます。

「1人で孤独だなぁと感じるときは、カフェで仕事をすることもあります。せっかく出掛けたのだからと、仕事に対するモチベーションも上がりますしね。また、在宅勤務をするときは、始業前に散らかった部屋や洗い物を片付けて、家事が気にならない環境作りをしています。出勤するときと同じ服に着替えて、化粧もして、『仕事なんだぞ』って自分に言い聞かせるのも大事です(笑)」。

いつも以上に意識するのは「コミュニケーション」

2人の部下を持つ本間さんには、テレワーク時、部下とのコミュニケーションにおいて、気をつけていることがありました。

「対面だと、部下から何か資料をもらって、私のほうでフィードバックするとき、相手の表情を見ながら言い方を変えたり、理解できていなそうと気づけたりして、説明の仕方を軌道修正できますよね。でもテレワークではそれができないので、伝え方に気をつけています。背景をちゃんと説明するとか、誤解のない言い方になっていないか確認するとか、慎重に言葉を選ぶようにしています」。

『仕事の進捗が見えづらい』というテレワークのデメリットも、コミュニケーションの量を増やすことで、解消しようと努めているそうです。

「テレワークの日には『今日はこの仕事をやります』と上司や部下にメールで宣言してから業務を開始します。『資料ができたので見てください』とか『資料作成中なのですが、これで方向性はあっていますか?』とか、普段よりこまめに進捗を報告していくことを意識しています」。

私も、みんなも、もっとテレワークを活用できたら

最後に、テレワークを利用して良かったことを聞いてみました。

「やはり、子どもとの時間ができたことが良かったですね。普段は7時くらいに長男を保育園に送り、閉園ギリギリの19時にお迎えに行くという感じなのですが、テレワークの日は早くお迎えに行けるので、子どもから『早くお迎えに来てくれてありがとう』と言ってもらえます。その笑顔を見るのがうれしいし、幸せです。テレワークの日にパワーを充電できるから、毎日出社が大変な中でも、仕事をがんばろうって思えます」。

2019年度から、テレワークの利用回数に制限がなくなったという同社。本間さんは今後、より頻度を上げてテレワークを活用していきたいと考えているそうです。

「今の部署では、みんなでアイデア出しをして物事を進めていく、コミュニケーションが必要な業務をしていることもあり、平均して月1回程度の利用になっています。でも今後は、子どもの用事がなくても、普通にテレワークができるようになればいいなと思っていますね

「テレワーク中は、電話や周囲からの声がけなど、業務を中断する要素が少ないので、資料の作成や企画のストーリーを考える仕事などは生産性が上がると感じています。それに、テレワークの快適さを知ったことで、満員電車に揺られる通勤時間がかなり負担でストレスだったと気づいたので(笑)、育児中の人だけのための制度ではないですし、私だけでなく、もっと多くの人に活用してもらいたいです」。

◆テレワークData/大同生命保険◆


導入開始: 本社勤務職員を対象に2014年4月より開始

対象者: 本社所属員全員。非正規職員である契約職員や特別職員(障がい者雇用)も利用可能。育児・介護等利用範囲の限定はなく、希望者は全員可

実施者数: 対象者全員のうち約2割

実施可能日数/回数: 2018年度までは週3回までの利用に限定。2019年度より、より柔軟な働き方を推進するため、制限を撤廃

実施場所: 2018年度までは自宅での利用に限定。より柔軟な働き方を推進するため、2019年度より制限を撤廃(自宅外での覗き込み防止策として「覗き込み防止シールをPCに貼付」)

施策の内容や環境整備のための技術開発・利用において課題はありつつも、生命保険会社という情報管理重視・保守的な金融機関としてのイメージや社内風土の中で、「できることから一歩ずつ」進めてきた姿勢が行政からの表彰等の評価につながっている