本連載の第247回では「定時で帰るために意識を変えよう」という話をお伝えしました。今回は問題解決プロセスを用いて、残業がなぜ発生しているかを分析する方法についてお話します。

「成果を上げる」と「定時で帰る」を同時に実現するにはどうすればよいか。これまで、本コラムでは様々な切り口で実現方法をお伝えしてきました。しかし、その根底にあるのは結局のところ「問題解決スキル」ではないでしょうか。

問題解決とは、とどのつまり「理想」と「現状」のギャップを埋めることと捉えることができます。「成果を上げながら定時で帰れる状態」を理想に置いて、「残業している状態」を現状とします。そして、そのギャップをどのように埋めるかを考えるというのは、問題解決のプロセスに他なりません。

問題解決のプロセスでは、理想と現状のギャップが発生している要因を分析し、真因を特定します。そして真因を特定できたら、その真因をどうやって取り除くかを考えます。しかし、残業が発生している要因として考えられるものを闇雲に出すのは非効率です。そこで、最初から個別の事例について考えるのではなく、「残業」という抽象的な概念から考え始めるのがおススメです。

ではここから、なぜ残業が発生するかを一緒に考えていきましょう。

そもそも、残業とは何でしょうか。バカバカしいと思われるかもしれませんが、大事なことなのでここから始めます。残業とは、定時後に会社に残っている、または仕事をしている、或いはその両方、と捉えることができます。

というのも、会社に残っているけど実質的に仕事をしていない人や、会社にはいないけど外回りやテレワークで仕事をしている人もいるからです。これらを考慮すると残業には3つの要因が考えられます。

  • 要因1: 定時後も会社に残って仕事をしている
  • 要因2: 定時後も会社に残ってはいるが、実質的に仕事をしていない
  • 要因3: 会社にはいないが定時後も仕事をしている

では、要因1について考えていきましょう。

要因1: 定時後も会社に残って仕事をしているのはなぜか。
「え、そんなの定時までに仕事が片付かなかったからに決まってるでしょう」と思われた方、それ以外の可能性も考えてみましょう。これには以下2つの要因が考えられます。

要因1-1: 当日終えるべき仕事が定時までに終わらなかったから
要因1-2: 当日の定時後に仕事が発生することが事前に分かっていたから

要因1-1についてはさらに2つに分解できます。

要因1-1-1: 当日の始業時またはそれ以前に、勤務時間をオーバーする仕事量を振られたから
要因1-1-2: 当日の始業後に、残りの勤務時間をオーバーする仕事量を振られたから

要因1-1-1については、単純に業務量とリソースのバランスが取れておらず、キャパオーバーになっていると考えることができます。

要因1-1-2については、上司からの仕事の依頼タイミングが遅いから、と考えられます。

紙面の都合上、要因分析はここまでにとどめておきますが、この先もなぜなぜを続けていきます。もちろん、最初の分岐で要員2や要因3が当てはまる場合には、そちらのなぜなぜを深掘りしていきます。そうすると、残業が発生している真因(真の要因)を突き止めることができるはずです。

そして真因を突き止めることができたら、そこでようやく対策を考えます。それによって的外れな対策を打ってリソースをムダにするリスクを抑え、効果的に問題を解決することができるはずです。

なお、このような要因分析ではロジックツリーという、原因究明のための可視化ツールを使用することで、漏れや重複を抑えながら構造的に分析することができます。ロジックツリーについては本コラムの第240回第241回にて紹介しているので、そちらも併せてご覧ください。

もちろん、問題解決プロセスは残業を減らすためだけではなく、あらゆる問題に活用できます。今回は残業を減らすための考え方をお伝えしましたが当然、成果を上げるためにどうしたらよいか、という示唆を出すためにも活用できます。ぜひ、トライしてみてください。

さて、本連載コラム「成果を上げながら定時で帰る仕事術」は本稿が最終回です。2019年6月14日に連載開始してから5年弱の間、ほぼ毎週執筆してまいりました。本稿を含めて全248回のコラムでは、私が長年の業務改善コンサルタントとしてやってきた知見・経験の全てを注ぎ込んできました。

その中のいずれかの内容が読者の皆様にとって少しでもお役に立てていれば、本望です。最後になりますが、これまで愛読してくださった方々と、マイナビニュースのご担当者様へ御礼申し上げます。本当にありがとうございました。皆様のご活躍を心より祈念しております。