本連載の第220回では「目の前の課題から取り組んでいませんか」という話をお伝えしました。今回はプロジェクトの乱立による弊害についてお話します。

「あなたの会社では、現在いくつのプロジェクトが走っていますか」

最近はAIの発展やDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入といったテクノロジーの面や、経済安全保障の観点からの海外拠点の見直しなどの地政学的なリスクの面など、様々な側面から企業が変革を求められています。

そのため、危機感を覚えている経営層のいる企業では常時、トップダウンで策定したプロジェクトがたくさん走っているというケースが少なくありません。その一方、現場から上がってきた課題に対応するためのプロジェクトもよくあります。

そこまではよいのですが、問題はプロジェクトが乱立している場合です。個々のプロジェクトがうまくいくことと、それが経営にとってプラスになることは必ずしも合致しないかもしれません。ともすればマイナスに働くことすらあります。

それでは、プロジェクトが無秩序に乱立することでいったいどのような悪影響が考えられるのでしょうか。以下、3つの視点から解説します。

1. 各プロジェクトが効果検証に至らない

「これをやろう!」といって新たにプロジェクトを立ち上げるのは簡単ですが、プロジェクトをたくさん立ち上げたのに、半年後、一年後になってから「そういえば、あのプロジェクトってどうなったんだっけ?」と忘れ去られてしまうことがあります。

プロジェクトが1つや2つなど、数が絞られていればそのようなこともないのでしょうが、数が多いせいでいつの間にかプロジェクトが尻すぼみになって効果の検証まで至らないということですね。

そして効果検証ができないと、そもそもそのプロジェクトが成功だったのか、失敗だったのかを評価することもできず、そこから得た教訓を次に生かすこともままなりません。

このような場合には効果検証ができるように、本当に意味のあるプロジェクトを絞って対応することが求められます。

2. やろうとしていることがプロジェクト間で重複してしまう

プロジェクトの数が増えてくると、目的が重複した複数のプロジェクトが発生するリスクが上がります。そうすると、タスクやアウトプットも重複してしまい、ムダが多くなってしまいます。

たとえば、業務効率向上を目指して業務調査を行ったところ、実は以前にも他のプロジェクトで似たような調査を行っていたことがあったとか、その際に作成した業務リストとほぼ同じものを作ってしまった、というケースがあります。

このようにプロジェクト間での作業やアウトプットの重複は、現在進行形のプロジェクト間だけではなく過去と現在、未来の間でも発生するリスクがあるので気を付けましょう。

3. プロジェクト間で効果を相殺してしまう

そして最も厄介なのはこちらです。あるプロジェクトでやろうとしていることとは真逆のことを、別のプロジェクトでやろうとしているケースです。

たとえばマーケティング部では高付加価値の市場を開拓するためのプロジェクトを走らせている一方で、営業推進部では低価格帯の商品の販促キャンペーンを計画している、というような場合です。消費者の視点に立つと、この会社がハイブランドを目指しているのか、安価で親しみやすいブランドを目指しているのか、そのスタンスが分かりづらくなってしまいます。

特にプロジェクトを管轄する部署が異なる場合に、こういうことが起こりやすくなる傾向にあります。頑張ってプロジェクトを成功させたくても、他のプロジェクトの目的と相反するものであっては互いに足の引っ張り合いになってしまいます。

ここまで見てきたように、プロジェクトの数が増えて乱立してくると様々な弊害が生じることがあります。そこで、次回はどうやったらこのような弊害を回避できるのか、その方法を説明しますので、お楽しみに。