いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。今回は、荻窪の定食店「ことぶき食堂」です。

  • お酒が進む豊富なメニューが”昼飲み”に華をそえる「ことぶき食堂」(荻窪)(写真:マイナビニュース)

    お酒が進む豊富なメニューが”昼飲み”に華をそえる「ことぶき食堂」(荻窪)

"食堂"なのにメニューはどれもお酒とマッチ!

荻窪駅北口から、新宿を背にして青梅街道を10分ほど直進。環状8号線と交差する四面道を右折して、さらに数分進んだ左側。

つまり、歩くとけっこうな距離があるのです。近くはなく、でも遠いというほどでもないという微妙なロケーション。ですから、駅前から井荻行きのバスに乗り、清水一丁目で降りたほうがいいかもしれません。

いずれにしてもそんな場所に、「ことぶき食堂」という有名なお店はあるのです。

  • 名物は「豚カラ」と「自家製ラーメン」

この日は名古屋から知人のTさんが来てくださったので、「どうせなら、ことぶき食堂で飲もう!」ということになり、友人のIくんを含めた3人でお邪魔したのでした。

「え、名古屋から来た人をわざわざ連れて行ったの? しかも飲める店なの?」そんなツッコミを入れられたとしても、まぁ不思議ではないでしょう。なにしろ基本的には食堂ですし、飲み屋ではないのですから。

とはいえ、ビールにめちゃくちゃ合うメニューが満載なのです。だから、名古屋から来た人を連れていく価値は充分にあると判断したわけです。

着いたのは13時をかなり回ったころだったので、お昼の時間はとうに過ぎています。にもかかわらず店内には数名のお客さんがいましたし、その後もぽつぽつと人が入ってきます。

そんなところからも、人気のほどがうかがえますね。メディアにもしばしば登場する有名店ですが、それ以前に、地元から信頼されるお店だということ。

  • 動きに無駄のないご夫婦

ともあれ何品かを頼み、まずはビールで乾杯。なお、この段階で、同行のIくんが驚きの声を上げたのでした。「お通しのぬか漬けが、めっちゃおいしい!」

  • ぬか漬けの漬かり具合が絶妙

たしかにそのとおりで、ぬか漬けの漬かり具合がすばらしい。お通しに手を抜かないお店って、それだけで信頼できますよね。

ですから、続いて登場した餃子がおいしいのも当然すぎる話です。軽すぎず、重たすぎず、ビールを飲むにはちょうどいい。なのですが、さらに名物メニューの「豚肉の唐揚げ」が登場すると、全員がさらなる興奮状態に。

  • 表面がカリッとした餃子の焼き具合がすばらしい

  • ここでしか食べられない名物の「豚カラ」

なぜってこれ、ニンニクと生姜を効かせた豚肉をカラリと揚げた"逸品"なのです。そのため、どんどんビールが空いてしまいます。平日の日中だというのに。

だから調子に乗って「ニラ玉子」を追加したのですが、甘辛い味が印象的なこちらも、やはり完璧です。

  • 「ニラ玉子」はバランスのよい甘みがポイント

そろそろラーメン頼みません?

「そろそろラーメン頼みません?」このあたりで、ラーメンに造詣が深いIくんから提案が。そう、「食堂」と名がつけられてはいるものの、基本的にこのお店は"町中華"でもあるのです。となれば当然、ラーメンも食べたいところですよね。

  • スッキリ上品な味わいは、荻窪ラーメンならでは

鶏ガラ、豚ガラ、鰹節、煮干し、野菜をじっくり煮込んだというスープはスッキリとしていて、喉ごしが絶妙。ツルリとした麺の食感も含め、典型的な「荻窪ラーメン」だと言えます。

  • のどごしが心地よい麺

いずれにせよ、なにを食べてもおいしいし、あいかわらずビールもどんどん空くのです。そのため、誰が言い出したかチャーハンも追加することに。

  • 見た目にもそそられるチャーハン

すべてのメニューを3人でシェアしたとはいえ、こりゃーちょっと食べ過ぎかも。と思いつつ、もはや全員が暴走列車状態。でも、そうさせるだけの魅力が、ことぶき食堂の料理にはあるのです。

ちなみにラーメンもさることながら、個人的にはチャーハンがいちばん好きだったかな。ラードが活きたしっとり系で、塩気のバランスもよく、言ってみれば「ツマミになるチャーハン」。

というわけで、すっかりゴキゲンになってしまったのでした。切り盛りされているご夫婦も穏やかで感じがいいし、さすがは人気の名店だなと実感することになったわけです。

Tさん、名古屋から来たかいがあったでしょ?


●ことぶき食堂
住所:東京都杉並区桃井1-13-16
営業時間:平日11:00~21:00
定休日:日曜日(不定休あり)

印南敦史

作家、書評家。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家として月間50本以上の書評を執筆。ベストセラー『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)を筆頭に、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)ほか著書多数。4月8日発売の最新刊は、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)。