いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。今回は、荻窪の喫茶店「カフェ クレエル」です。

  • 「カフェ クレエル」(荻窪)

ランチタイムは規格外の長さ

荻窪駅北口を出て青梅街道を渡り、新宿方面へ数分進むと、「ことぶき通り」という小さな商店街が現れます。足を踏み入れるとまず目につくのが、ファンの多い台湾料理店「呉さんの台湾料理」と、同じくラーメン通には知られた「らーめん なないろ」。

そちらも非常にいい店のですが、同じように注目していただきたいのが、ガレットとクレープの専門店「コム デ ジュルノー」の並びにある「カフェ クレエル」です。カフェと表記されてはいるものの、見てのとおり昔ながらの喫茶店。

1970年代後半に「幻のコーヒー」として大々的にプロモーションされたキーコーヒーの「トアルコ トラジャ」を売りにしているところからも、当時と変わらないスタイルを貫いていることがわかります。

いわばコーヒー専門店として、しっかり実績を積み上げてきたわけです。が、それだけで終わらないのがこのお店のすごいところ。というのも、ランチメニューが非常に充実しているのです。

しかも単にメニューが多いだけではなく、コーヒー専門店の片手間仕事では決してないクオリティの高さ。お昼どきには広い店内が満員になってしまうのですが、つまりはそれだけ「おいしい店」として認知されているということ。

ところで一般的に、ランチタイムって11時くらいから14時あたりまでではないでしょうか。ところがここの場合は長くて、16時まで……だったはずなのに、なんとさらに時間が延びておりました。

以前はなかった「おすすめメニュー」という看板に、「AM11:00~ラスト」と書いてあるのです。

  • 実質的なランチメニューは11時から閉店まで

メニューはランチタイムのそれと同じなので、つまりは実質的に11時から19時の閉店までランチタイム・メニューが食べられるということになるわけです。もはや、なにがランチなのかよくわからない状態ですね。いや、大歓迎なんですけど。

  • ゆったりとした店内は居心地抜群

ナポリタンを注文すべし!

さて、ふっくらハンバーグや具だくさんミネストローネスープも気になったのですが、結局はナポリタンを頼むことにしました。というのもナポリタンは、ここの人気メニューなのです。

事実、店内のあちこちから「ナポリタン!」と声が聞こえてきます。あとから横の席に座った女性3人組も、全員が迷うことなくナポリタンを頼んでおりました。ドレッシングも手づくりだと思われるサラダを食べながら待っていると、ほどなく待望のナポリタンが登場。

  • ナポリタンは昭和を感じさせる正統派

玉ねぎ、ピーマン、マッシュルーム、ベーコンがふんだんに入った、まさしく正統派です。今風にアレンジされたものよりも、個人的にはこういう昭和スタイルのほうが好きだな。

パルメザンチーズ、それからタバスコをたっぷりかけていただきましょう。

  • チーズもたっぷりかけ放題

ひさしぶりに食べたのですが、やっぱり水準以上のおいしさ。バターがたっぷり入ったソースは濃厚で、ケチャップを使ってごまかしたようなタイプとはまったく違います。ひとことで言えば、やさしい味。これは、人気が出るのも当然です。

  • もっちりとしたパスタの食感も最高

お昼に混雑することは知っていたので11時半ごろ入店したのですが、案の定、食べ終えたころにはお客さんが次から次へと。ほどなく席が埋まってしまったし、早めに入って正解だったな。

なお、食後にはサイフォンで淹れたコーヒーが出てきますが、いうまでもなくトラジャブレンド。コクがあり、適度に酸味も感じられるバランスのよいテイストです。

  • 歴史を感じさせるトアルコトラジャ

ちなみにBGMはクラシックで、この日はベートーヴェンの「交響曲第9番」がかかっていました。あれって、日本では年末の定番みたいになってるじゃないですか。だから聴いていたらなんだか年の暮れみたいな気分になってきて、でも実際は新しい年が始まったばかりだし、どうにも不思議な感じではありました。


●カフェ クレエル
住所:東京都杉並区天沼3-30-2
営業時間:10:00~19:00
定休日:日曜日

印南敦史

作家、書評家。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家として月間50本以上の書評を執筆。ベストセラー『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)を筆頭に、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)ほか著書多数。4月8日発売の最新刊は、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)。