いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。

今回は、国分寺の洋食店「フジランチ」をご紹介。

  • きわめて中央線的な昭和の洋食店「フジランチ」(国分寺)

国分寺を代表する昔ながらの洋食屋さん

国分寺駅北口を出て、バスターミナルを横目に見ながら駅前通りを直進。「本町二丁目」交差点を渡って右折したら、セブンイレブン店前に見える路地を左に入りましょう。そのまま進んで1本目の角を右に曲がると、すぐそこに現れるのが「フジランチ」です。ご存知の方も多いと思いますが、国分寺を代表する昔ながらの洋食屋さん。

  • この看板が目印

学生時代以来だから30年ぶり……いやいや、それどころじゃないかもしれませんねえ。過ぎた時間を正確に計算すると、自分の年齢を目の前に突きつけられることになるので考えないようにしますけど。

そんなどうでもいい話はともかく、「中央線『昭和グルメ』」というならここは外せないわけですよ。そう感じていたから半年くらい前にお邪魔したのですが、実をいうとそのときは定休日に当たってしまいましてね(ちゃんと調べろや)。そこで今回、改めてチャレンジした次第。いつも混んでいる印象のある人気店なので、開店時刻に合わせて一番乗りしました。

  • なんともかわいいたたずまい

外観からしてまったく変わっていませんね。昭和を感じさせるすりガラスとか、茶色い木枠とか、時が止まっているという表現がぴったり合います。

  • 店内も昔のまま

もちろんそれは、左側に4人がけのテーブル席が3卓あって、右側には厨房に向いたカウンター席がズラリと並ぶ店内も同じ。その光景を目にした瞬間、「ああ、こういう感じだったなあ」と数十年前の記憶が蘇ってきました。

  • 感染対策もバッチリ

違うところといえば、コロナ対策でカウンターと厨房との間がビニールシートできっちり仕切られていたこと。それからカウンター席に1つおきで「×」印がついていて、間隔を開けて座るよう指定されていたこと。こういう時代ですから、それは仕方がありませんよね。むしろ、感染対策が行き届いているので安心できます。

  • 手書きコピーがいい感じ

ところで店頭に手書きで「安くておいしいボリュームタップリの料理」と書かれているとおり、ここはなんでもおいしくて、しかもご飯の量がすごく多いんですよ。だから「ご飯少なめでお願いしたほうがいいかー」などと考えながら、「ハンバーグエッグ」にすることにしました。「好評のハンバーグ」という表記もあるとおり、フジランチといえばハンバーグなんでね。

  • 「好評のハンバーグ」との記述が

この日のサービスメニューは「ハンバーグステーキ」か「ハンバーグ+アジフライ」だったんですけど、そっちは目玉焼きがついていないんですよ。でも個人的に目玉焼きは乗せていただきたかったので、あえてこちらにしたのでした。

奥様から注文を告げられると、白衣を着たご主人が調理を開始。ホール担当は息子さんでしょうか? 3人の息が合っていることが、見ていてはっきりわかります。なお、すぐにお客さんが続々と入ってきて、ほんの10分程度でカウンター席は埋まってしまいました。早めに来てよかった。さすがは人気店ですね。

  • ハンバーグエッグ+みそ汁

さて、穏やかな空気が流れる店内の雰囲気を楽しんでいると、ほどなくハンバーグエッグとライスが運ばれてきます。あ、そうか。セットメニューと違って、みそ汁がついていないんですね。ってことで、80円(!)のみそ汁を単品で追加。すぐに登場したそれは、わかめ、油揚げ、ネギの入った正統派です。

そういえば、これまたあとから気づいたんですよ。「ご飯少なめ」にしてもらうのを忘れてたことに。店名の語源は「ご飯が富士山のように山盛りになってるから」だと聞いたことがあるのですが(真偽のほどは不明)、やっぱりすごい盛りだなー。まあ、たまにはいいか。

  • 見るからにボリューム満点

メインのお皿は、デミグラスソースがたっぷりかかったハンバーグの上に目玉焼き。その横にスパゲティのソテーが添えられていて、向こう側にはキャベツの千切り、トマト、きゅうり、レタスのサラダ。狂おしいほどに昭和な、あのころから変わっていない“ごちそう洋食”スタイルです。

  • 目玉焼きを割ると……

肉汁がたっぷり詰まったハンバーグは柔らかくジューシーで、濃いめのデミグラスソースとも相性抜群。目玉焼きの黄身をつぶして絡めると、まろやかな味わいに変化していきます。

やっぱりこれはご飯が進むなー。さすがに後半はおなかがきつくなってきたけれど、それでもしっかりいただくことができました。

いやー、大満足です。味も雰囲気も昔のままだから、20代のころの、いいことも悪いことも思い出してしまいましたよ(それが青春)。お勘定の際、数十年ぶりだと告げると、「こっちに来ることがあったら、また寄ってくださいね」と、お母さんがサービス券を手渡してくれました。そうだよね、電車で一本なんだから、もっと通わなくちゃいけないね。次に頼むとしたら、ボリュームがさらにすごい「フジセット(ハンバーグエッグ+鳥のから揚げ)」かなー。

  • ドアのつくりもレトロ

ちなみに以前は阿佐ヶ谷にも同名店があり、現在も東小金井に「冨士ランチ」名義のお店が存在しています(後者は「ランチ」なのに夜のみの営業)。ちょっと疑問に思ったので伺ったところ、どちらもきょうだいのお店なのだそうです。

なるほどー、そういうことだったのか。阿佐ヶ谷のお店がもうないのは残念だけど、いずれ東小金井にも足を運んでみよう。

●フジランチ
住所:東京都国分寺市本町2-13-7
営業時間:11:30~14:00 、17:30~21:00(新型コロナウイルスの影響で変更あり)
定休日:火曜、水曜