大事なものたちだから"お手入れがしたい"

何にもない暮らしをするようになってから、ものの手入れが好きになった。これは汚部屋時代には考えられなかったことで、以前はものに対して、"酷使してくたびれたら捨てる"という発想でしかなかった。しかし、何にもない暮らしに憧れ、お気に入り以外のものは持たないようになると、ものへの愛情がとめどなく溢れるようになり、ごく自然に"お手入れがしたい"という気持ちになった。

けれど、長い間洋服だけは少し例外だった。少し前の私は服もほとんど持たなかったので、どうしても1着あたりの着る回数が多くなり、ワンシーズンで着倒すことが多かった。

しばらくはそれでも良かったのだけれど、お気に入りの服が増えるにつれて"服愛"も増し、次第に「もう少しこの服たちを長く楽しみたい!」と思うようになった。30歳を過ぎ、洋服の好みがだいぶ定まり、来年も再来年もその先も着続けたい服が増えてきたからかもしれない。

来年も再来年もその先も、長く着続けていたいから

ニットの毛並みが一瞬で!

そんな折に手に取ったブラシが、平野ブラシの洋服ブラシだった。すでにこのメーカーの歯ブラシと靴ブラシを愛用していて、すっかり平野ブラシのファンになっていた私は、洋服ブラシを買うのも絶対にここのメーカーにしようと決めていたのだ。

お店の人に色々見せてもらって、私のワードローブに合い、私の手で持ちやすいサイズだった馬毛のブラシを買った。職人が手で植えたという馬毛は、柔らかくなめらか。そのため、このブラシでカシミアのストールを撫でてあげると毛並みがスッとそろい、見違えたようにきれいになった。

手に馴染むサイズの馬毛のブラシをチョイス

その使い心地に感動した私は、今まで手入れが面倒に思い、あまり自分では選ばなかったニットのセーターにも挑戦するようにもなった。セーターを着た日は、その日の終わりにブラシで毛玉ができやすい腕周りをささっと一撫で。それだけで十分毛玉防止になる。ファーやムートンコートも脱ぐ際に一撫でするだけで、簡単に毛並みがそろうので一瞬で美しくなる。それが楽しいので、全く面倒に感じないのだ。

これからの季節、馬毛のブラシの活躍がまた楽しみだ

これからまた冬が来る。寒くなってくると、このブラシはクローゼットの中で一番取りやすい場所に移動され、毎日のように大活躍してくれるのだった。

著者プロフィール: ゆるりまい

1985年生まれ。仙台市在住。漫画家、イラストレーター。
夫、母、息子の人間4人 +猫4匹ぐらし。
生まれ育った汚家の反動で、現在ものの少ない暮らし街道爆進中。
ものを捨てることが三度の飯より大好きな捨て変態。
そんな日常を描いた『わたしのウチには、何にもない。』(KADOKAWA)は2016年、夏帆主演で連続ドラマ化された。
現在cakesにて「ゆるりまいにち猫日和」、赤すぐにて「赤すぐみんなの体験記」を連載中。