病気やケガなどで働けなくなり、資産もなく、生活に困窮するケースのセーフティーネットには、生活保護制度などがあります。そのほか、やむをえず母子家庭や父子家庭などになり、低収入で生活費が不足するといった場合に対しても、「母子・父子・寡婦福祉資金」としてさまざまな支援が用意されています。本連載の最終回となる今回は「女性福祉資金」について解説していきます。

  • 母子家庭や父子家庭向けの福祉資金があるのをご存じ?(※写真と本文は関係ありません)

独自の福祉制度を設けている区は?

「母子・父子・寡婦福祉資金」の内容は各県で異なりますが、「事業開始資金」「事業継続資金」「修学資金」「技能習得資金」「修業資金」「就職支援資金」「医療介護資金」「生活資金」「転宅資金」「就学支援資金」などがあります。関東の1都6県を例にすると、名称は異なる場合もありますが、おおむね「母子・父子・寡婦福祉資金」の内容と趣旨に沿ったものです。

東京都の場合は上記制度に加え、女性福祉資金制度があります。東京都の女性福祉資金制度は、23区は対象ではありませんが、区独自で制度を設けているところもあります。廃止した区もあるようですが、平成30年8月現在では中央区や港区、墨田区、品川区、世田谷区、北区、板橋区、練馬区の8つの区が制度を設けています。ただし内容はそれぞれの区で異なりますので、お住まいの区に問い合わせてください。

成人したら自力で生活を維持していく努力は当然です。子どもをうんだなら、最悪一人でも育てられるように、スキルアップや社会適応をし続けられるように努めていかねばなりません。一人親だから生活に困るというのは、本来の姿ではないと思います。

しかし現実にそうした例は多く、また、どんなに準備していても思わぬことが起きるのが人生です。少しの支援で負の連鎖から抜け出せて、自立につながるのであれば、その支援制度はとても有効なものだと言えます。

原稿をまとめながら思い出すのが、有名なバングラデシュの「グラミン銀行」の成功例です。わずかな融資で貧困層に自立の機会を与え、経済的発展を創出する効果的な手段として、「グラミン・モデル」の創設者とグラミン銀行は2006年にノーベル平和賞を受賞しています。

融資を受けた97%以上は女性だそうで、考え抜かれた仕組みにより返済率も高く、融資が有効に働いています。助成金は民間銀行の融資ではなく、元は税金ですので、自立につながる最大限の効果を期待したいものです。

東京都の「女性福祉資金」の内容

さて、それでは女性福祉資金の詳しい内容についてみていきましょう。東京都の女性福祉資金貸付制度とは「都内の市町村に6カ月以上居住」していて「配偶者のいない女性」を対象に資金の貸付を行うものです(一部所得制限があります)。

具体的には、下記の(1)または(2)に該当し、貸付が自立につながると判断され、返済計画を立てることができる方が対象となります。

(1)親、子、兄弟姉妹などを扶養している方(所得制限なし)

(2)年間所得が203万6,000円以下で、かつて母子家庭の母として20歳未満の子を扶養したことがある方、または婚姻歴がある40歳以上の方

貸付金一覧

対象となる貸付資金は下図のように多岐にわたります。それぞれに限度額と償還期限が定められています。

  • 女性福祉資金の貸付限度額

利子は下記の(1)または(2)によって異なります。返済には6カ月または1年の据置期間が設定されていて、償還期限は据置期限後の期限となります。

(1)女性が扶養する子の技能習得・就職支援・修学・就職支度資金の場合

無利子です。収入によっては保証人が必要なケースがあります。

(2)女性のための資金または扶養する子のための医療介護・結婚資金の場合

無利子ですが、保証人を立てることが困難と認められた場合は1%の利子での貸付も可能です。

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。