特定支出控除という言葉をご存じででしょうか。何やら聞き慣れない言葉だと感じる人もいるかもしれませんが、簡単に言うと「特定の支出額に応じてその実額を給与収入から差し引くこと」で、この制度によって税負担が軽くなります。

そしてこの特定支出控除は、ビジネスマンにしばしばみられる単身赴任にも適用されます。今回は「単身赴任旅費の特定支出控除」について詳しくみていきましょう。

特定支出控除とは

まずは特定支出控除についてきちんと理解しておきましょう。特定支出控除とは、「給与所得者が『特定支出』をした場合、その年の特定支出の額の合計額がその年中の給与所得控除額×1/2を超えるときは、確定申告によりその超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができる制度」です。給与所得控除は次の表のように収入に応じて決められています。

  • 収入と給与所得控除額の関係性

特定支出とは、以下の項目のうち一定のものとなります。ただし、いずれの特定支出も給与の支払者が証明したものに限られます。

また、給与の支払者から補填される部分があり、かつ、その補填される部分に所得税が課税されていないときは、その補填される部分および教育訓練給付金、母子(父子)家庭自立支援教育訓練給付金が支給される部分がある場合における当該支給される部分は、特定支出から除かれます。

1.通勤費(一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出)
2.転居費(転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出)
3.研修費(職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出)
4.資格取得費(職務に直接必要な資格を取得するための支出)
5.帰宅旅費((単身赴任などの場合で、その者の勤務地または居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出)
6.勤務必要経費(次に掲げる支出で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与などの支払者より証明がされたもの)
(1)書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)
(2)制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)
(3)交際費、接待費その他の費用で、給与などの支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費など)

  • 会社員につきものの単身赴任の際は、特定支出控除を活用したい(※写真と本文は関係ありません)

特定支出控除に必要な手続きと書類

特定支出控除を受けるためには、確定申告を行う必要があります。確定申告の際に必要書類は以下の通りです。

・特定支出に関する明細書

・給与の支払者の証明書(特定支出ごとの所定の書式あり)

・搭乗・乗車・乗船に関する証明書(依頼書兼用の所定の書式あり)や支出した金額を証する書類(※依頼先は乗車した列車の車掌、降車駅の精算所、空港の各会社のカウンターなどで)

・給与所得の源泉徴収票