高齢者が快適に暮らすために大切かつ意外なポイントは、電気関連の計画です。皆様の家ではタコ足配線していませんか? 所定の場所にコンセントがなくて不便を感じていませんか? 高齢者の住まいでは、特に配線計画が重要なのです。

高齢者は電気を多く使います。コンセントの位置や数が適切でなく、タコ足配線になったり、床に電気コードが這ったりしていては、とても危険です。自分でキッチンに立って食事を作れなくても、コンセントと家電製品が適切な位置にレイアウトされていれば、ベッドで上半身を起こせば自分で食事を作ることは不可能ではありません。

ベッド脇にポットや電子レンジなどを置ける場所を確保し、必要なコンセントを用意すれば、自分でレトルト食品などを温めて、しっかりしたお昼を自分で作れるケースもあります。できることを広げる意味で、電気関係の配置は重要なのです。

さらにこれからの高齢者は、パソコンを普通に使えるでしょう。ベッド周りにPCを使える環境を整えることも大切です。スマホを充電するコンセントも必要です。

高齢者を研究していた母校の教授が、高齢者の実態調査をしたことがあります。少し前ですので多くは畳に布団を引いて寝ているのですが、例外なく、布団のまわりの床に、ぐるりと日常必要なものが散乱していました。掃除などはほとんどでできていなかったでしょう。

それで思い出すのが、昔の日本の茶の間にあった「茶箪笥」です。火鉢の前に座り、後ろを振り向けば、茶箪笥にお茶のセット、薬、爪切りなどの衛生セット、印鑑や文房具、便せんなどが収まっていました。これからは高齢者用の茶箪笥をベッドの周りに適切に配置すると、高齢者ができることが広がるでしょう。

補助金をもらうのは簡単ですが、高齢者のためのリフォームは奥が深いです。補助金を最大限有効に活用するためには、工事店に任せっきりにしないで、自分でもあれこれ考えて工夫してみてください。

※写真と本文は関係ありません

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。