痩せるかどうかの基本はエネルギー収支です。消費する以上に摂取しなければ自然と体重は落ちます。もちろん前提として、代謝機能に問題がない場合です。でもあなたも経験があるように無理やり我慢するダイエットは続きません。
第1回から第4回の連載では、ダイエットに必要な知識を紹介してきました。連載最後となる今回は、私が思う痩せるための食事の2つのポイントをお伝えしたい思います。
結論としては、『昔ながらの一汁三菜』に尽きます。具体的に言うと、食物繊維の摂取量を増やし、加工食品の摂取量を減らすという2点です。ではなぜそのポイントを押さえたほうが良いのか、解説をしていきたいと思います。
痩せる食事とは?
痩せる食事と聞くと、糖質OFFの食べ物や0カロリー食品をイメージしたりしませんか? 糖質OFF食品についてはもう大丈夫ですよね? 糖質は身体のエネルギー源になるので、必要不可欠です。そういった観点からもお米は重要で、ダイエットの時も中心にした方が良いと考えています。そして血糖値は短期的な食欲コンロールにも役立つし、第4回の記事でもお伝えしたように大切な栄養となります。
一方0カロリー食品はほとんどエネルギーがないけれども、胃だけが刺激され脳は満足しません。そのミスマッチの影響で食欲が乱れることに繋がるかもしれないと私は考えています。このような理由から極端な食事に頼ることは痩せるように見える反面、デメリットが大きいと思います。ではどのような食事のバランスが良いのでしょうか?
食べ物の質に拘る一汁三菜が最強
昔ながらの一汁三菜は栄養のバランスがとても良いと思います。しかし現代は食物繊維の摂取量が減り、加工食品の摂取量が増えました。昔ながらの食事の場合、お米を中心としていて、発酵食品や食物繊維が豊富です。
食物繊維と聞くと、野菜を想像する方が多いかもしれません。ですが、未精製の穀物を意識的に摂ることで食物繊維も摂れます。例えば、白米を玄米に変えるということです。白米150gで食物繊維はおおよそ0.45g、玄米は150gでおおよそ2.24gとなっています。これを1日3食と仮定すると、白米では1日1.35g、玄米では6.72gと、白米のおよそ5倍の食物繊維が摂れます。そのため、野菜を無理やり詰め込むという発想ではなく、まずはお米の質を変えることに目を向けてみてください。
お米は糖質も含んでいますので、身体に必要なエネルギーを満たし満足感も高いです。食物繊維は1日に30g以上が推奨されています。そして30g以上摂ることによって、平均体重、BMI、体脂肪率の減少の十分な効果が得られています。なので、白米を玄米に変更するなどの工夫をして食物繊維を意識することが大切です。
加工食品はダイエットを阻害する?
また、現代には加工食品が多く溢れています。加工食品は様々な理由からダイエットを阻害します。今回は2つの観点から説明します。
1つはエネルギー密度の観点です。加工食品は、エネルギー密度と言って、重さあたりのエネルギー量が非常に高いです。つまり、『加工食品は量が少なくてもカロリーが高い』ということになります。
2つ目は摂取率です。加工食品は柔らかく、口当たりが良いように加工されているため、単位時間あたりの摂取量を多くさせると言われています。この単位時間あたりの摂取量が摂取率です。つまり、加工食品は食べ過ぎを起こしやすく、重さあたりのカロリーが高いため、摂取カロリーが高くなりやすいのです。このような理由から、現代の人は食物繊維の摂取量を増やし、加工食品の摂取を減らした方が痩せやすいのではないかと考えられます。
そうは言っても個人差はあるから自分の身体に合わせよう
上記で述べたように食事のバランスや食べ物の質は大変重要だと思います。ただ、「食べ物の質に拘りバランスも意識しなければ痩せない訳ではない」というのが私の考えです。
もちろん食事のバランスや質が良いに越したことはありません。それでも、お菓子を食べ、野菜をあまり食べていなくても痩せている人はいます。一人ひとり生活の状況や身体と心の状態、嗜好性も全く違います。バランス良い食事に囚われすぎてしまい、お菓子を食べられなくてストレスが溜まる……。このような状態では、身体の状態は良くても心の状態が悪くなるかもしれません。それが続いてしまえば心の状態が身体に現れて、逆に痩せることが難しくなってしまうかもしれません。
さらには、白米から玄米に変えたら消化不良を起こしてしまう人も居ます。その場合は、いきなり白米を玄米に変えるのではなく1:1で混ぜる、玄米の代わりにもち麦を混ぜる、ということから始めても良いかもしれません。このように目指すべきは、食事のバランスは一汁三菜のイメージで食べ物の質を高めるということです。しかし、1人1人の生活状況や身体、心の状態、嗜好性に合わせて取り組めるところから行うのが良いと思います。
したがって、栄養のバランスを意識しつつ、お菓子やデザートとも上手く付き合うことができるようになること、それが何より大切ではないかと思います。ダイエットはイベントではありません。ご自分で続けられる形で、上手く折り合いつけながら取り組むように意識してください。
【参考文献】
Sacks FM, et al. Comparison of weight-loss diets with different compositions of fat, protein, and carbohydrates. N Engl J Med. 2009 Feb 26:360(9)859-73.
Jovanovski E, et al. Can dietary viscous fiber affect body weight independently of an energy-restrictive diet? A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Am J Clin Nutr. 2020 Feb 1:111(2):471-485.
Reynolds A, et al. Carbohydrate quality and human health: a series of systematic reviews and meta-analyses. Lancet. 2019 Feb 2:393(10170):434- 445.
Forde CG, et al. Ultra-Processing or Oral Processing? A Role for Energy Density and Eating Rate in Moderating Energy Intake from Processed Foods. Curr Dev Nutr. 2020 Feb 10:4(3):nzaa019.
国民健康・栄養調査Nakaji S,et al.Eur J Nutr 2002,41:227
庵野拓将,科学的に正しいダイエット 最高の教科書,KADOKAWA2021,