今日は、神田の「河北や」の一杯を紹介したい。JR「神田」駅の西口から真っ直ぐ歩いて8分くらい。本郷通りを越えてすぐのあたりで、都営新宿線「小川町」駅や東京メトロ千代田線「新御茶ノ水」駅からの方が近いことには帰りがけに気がついた。

  • 「河北や」の「肉そば」を「温・ダブル」で(税込570円)

    「河北や」の「肉そば」を「温・ダブル」で(税込570円)

それにしても、神田の西口商店街はなんと誘惑の多いことか。ラーメン、うなぎ、カレーに中華や居酒屋まで……右に左に首を動かすのに忙しい。今回の一軒は、そんな享楽のストリートを抜けて少し落ち着きを取り戻したエリアに構えている。

居酒屋そばならではの豊富なメニュー

白いのれんには「立喰い 山形肉そば 立呑み」。「そば」のちょうちんと並んで、「居酒屋」の赤ちょうちんもぶら下がっており、しばしば見かける飲み屋タイプの立ち食いそばであることが分かる。中に入ると、照明控えめの落ち着いた店内。昼間なのに、ついつい酒も頼みたくなってしまうムードがある。券売機は正面に。

やはりここは「肉そば」を「温・ダブル」で注文したい(税込570円)。この連載でも過去に取り上げたが、肉そばは山形の郷土料理のひとつで、鶏肉を使ったそばのことだ。

食券を向かいの厨房に手渡す。店員さんはみな女性で、物腰柔らかな接客が好印象。座席は二人がけのテーブルを中心に、正面にカウンターが。立ち食い席はなかったと思う。壁に地酒やおつまみメニューがびっしり貼られているのは、居酒屋そばならでは。「塩かつおワカメ」なんて、最高じゃないか。

ランチタイムを過ぎた14時頃に相客は7~8人いたが、時間に追われて食事しているような人は見かけられない。既に居酒屋時間が流れているようだった。

しょっぱ甘い肉で酒の相棒にも

1~2分ですぐ呼ばれ、着席。薄切りの鶏肉がドサッと盛られた上に相性抜群のネギ。肉はしょっぱ甘くて、噛みごたえもしっかり。麺は太めでコシがある。

色の薄いツユも肉そばの特徴のひとつだ。鶏の旨味の効いたやや塩味強めのスープは、働く人のランチにはもちろん、酒の相棒にもバッチリ。最後の一滴まで飲み干し、温まらせてもらった。

  • 「河北や」へはJR「神田」駅の西口から徒歩8分、もしくは都営新宿線「小川町」駅B7から徒歩3分

    「河北や」へはJR「神田」駅の西口から徒歩8分、もしくは都営新宿線「小川町」駅B7から徒歩3分

店を出る頃には各席に灰皿が配られ始め、これくらいの時間から居酒屋シフトになるようだった。次に訪れる時は、芋煮と冷たい肉そばを日の落ちる頃にゆっくりいただきたい。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。