江戸川区の立ち食いそばを巡る。東京メトロ東西線「葛西」駅。バスロータリーになっている南口側、駅から徒歩2分足らずの距離。環七沿いの店が今回の「東西そば」である。

  • 「鷄ワンタンそば」(550円)(写真:マイナビニュース)

    「鷄ワンタンそば」(550円)

聞くところによれば24時間営業。時を選ばず、江戸川・南の要所の胃袋を満たし続けている。その24時間営業の弊害(?)でもあるのだが、店頭には既成品ののぼりが一本出ているのみで、外から見た店内は暗い。一見営業しているかどうかわからないくらいである。時はまもなく11時。店内にかろうじて数人の姿が見えたので、自動ドアをくぐる。

街の食堂のような豊富なメニュー

作業音だけが響く店内。淡々とそばを出し、淡々とそれをすする光景が、目から耳から伝わってくる。立ち食いそばならではの、ある種、工場じみた空気だ。出入口近くに券売機が2台。そばの種類は豊富で、各種天ぷらそば、山菜や月見、コロッケ、肉南蛮など。カレーや丼、ミニそばをつけた定食セットメニューもあり、どちらかといえば街の食堂に近い役割なのかもしれない。今回選んだのは「鷄ワンタンそば」(550円)。まず他所では見られないそばであろう。

左手に厨房とカウンター、右手に客席。窓側は横一列の着席カウンターで、中央には二人がけのテーブルを仕切りで一人用にした変わった座席がいくつか並んでいる。正面奥、戸の向こうにもスペースがあるようだったが、この時間は使われていないようで消灯中であった。そばの完成までそれなりに時間は要した。といっても3~4分の範囲だが。箸と七味は受取口で取る。

10ものワンタンが丼を覆いつくす

見た目は、完全に中華。いや、見た目だけでなく、味わいもそれに近い。丼はたっぷりのワンタンで覆われており、数えてみれば10個入り。その上に振られたゴマ。立ち食いそばにはおなじみのネギもこのそばに合わせると、薬味の役割が変わって見える。ひとつ口にはこんでも和風では決してなく、チャーハンの横についているアレと同じだ。かといって中華そばなわけでもなく、甘めのツユと細めのそばはいつものかけそば。何を食べているのかわからなくなってくるアンバランスさは実に面白い。

  • 東京メトロ東西線「葛西」駅から徒歩2分ほどの距離にある「東西そば」

後から知ったが、こちらの「鶏ワンタンそば」は期間限定メニューらしい。いつまでなのかは見た限り記載がなかったが、立ち食いそばは一期一会ということで。見かけた折には、ぜひ。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。