またしても「六文そば」に足を運んでしまった。立ち食いそばファンなら、誰もが知るところの黄色い看板のこのお店。特徴は、バラエティ豊富な天ぷらと、その安さだ。かき揚げやいか天などの主役級はもちろん、ソーセージ天やあじ天、真っ赤な紅生姜天が当たり前にように並ぶのは六文そばならでは。また、どのメニューも500円でお釣りがくるほどの価格設定は、平成も終わろうとしているこのご時世に衝撃的で、根強い人気を誇っている。

  • 「なす天そば」(380円)

今回は、その六文そばの「中延店」。東急大井町線「中延」駅下車、改札出て右手すぐにある。ちなみに左手すぐのところには、この連載でも以前紹介した「大和屋」があり、駅前がちょっとしたパラダイスになっている。

「六文そば」おなじみの店内に心落ち着く

引き戸とのれんの上、お品書きが外にも書かれている。かけそばは250円。しかも値段を貼り直した形跡があり、以前はさらに安かったのだろう。訪問したのは午前10時半頃。天ぷらショーケースとテーブルの間に隙間が空いた(商品と代金の受け渡しのため)おなじみのカウンターはL字で、こちらにはスツールが5脚ほどあった。

店内ではNHKラジオが流れる。先客は2人。背後には立ち食い用のカウンターもあったが、二人とも着席。カウンターが足にぶつかって少々座りにくいが、気にするまい。手早く水を出されるので、こちらも素早く「なす天そば」(380円)を口頭注文した。

名物の鷹の爪を振りかけてそばを堪能

茹で置き、揚げ置きのスピード重視で、15秒ほどで丼が目の前に置かれる。代金引換なので、小銭を手渡す。食券制にはない温かみも、あるといえばある。卓上の鷹の爪は、六文そば名物のトッピングだ。パラリとそばに振りかければ、見た目は華やか、ツユはベリーホットに。ツユの色は濃いが比較的さっぱりしているので、これくらいのパンチがあると一段と食欲が増進する。

なす天は二つ割りながらラージサイズ。じゅわっとひろがるみずみずしさが、しみじみと美味い。麺も、相変わらずそばだかうどんだか区別がつかない「六文そば」だが、これはこれで文句はない。でろっと柔らかく、ざざっとすすり上げる。

  • 東急大井町線「中延」駅下車、改札出て右手すぐにある「六文そば 中延店」

この連載だけでも既に150杯以上の立ち食いそばを食してきたが、なんだかんだで家の近所にできたら嬉しいのはこの「六文そば」だ。店舗によってブレも大きくツッコミどころも少なくないが、未経験の読者にはぜひ一度味わっていただきたい。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。