大型連休明けは、少し肌寒かった。こんな日は温かいそばが恋しい。ということで向かったのは目白「車」である。JR山手線「目白」駅改札を出ると、左手前方に交番が見える。その脇に小さな階段があり、降りる途中に入口がある。改札から徒歩1分かかるかどうか、といった距離感。目立たない場所のせいか、これでもかとのぼりが立てられている。早速中へ入ろう。

  • 「天玉そば」(420円)

堅実なメニューと静かな店内

店内は広い。正面に厨房L字カウンター。左手に立ち食いカウンターとスタンド。右手に着席カウンターと2人がけテーブルがいくつかある。曇り空の天気もあってか、店内は少し薄暗い。テレビやラジオなどはなく、静かな店内に調理音だけが響いている。

出入口付近に券売機があるのでこちらで食券を購入。きつね、たぬき、月見、わかめ、コロッケ…… 肉そばもあるようで、「肉とめんの特盛そば・うどん」という、具・麺の両方が大盛りになったメニューもあった。もちろん冷しそば・うどんや、カレーなどのご飯物も。奇をてらった献立はなく、堅実な印象。ボタンを押したのは「天玉そば」(420円)。「天ぷら=かき揚げ」に生玉子を落とした一杯。厨房の中には50~60代の男性が二人。食券を「そばで」と伝えながら渡す。

待ち時間は1分弱。その間に水をくみ、奥の着席カウンターに陣取った。平日の14時半頃、ランチタイムは過ぎていたが、自分のほかに相客は2~3人。みな静かにそばをすすっている。そのうち自分のそばが呼ばれ、お盆なしの丼を持ちながら自席へ戻る。

上品なダシの味わいは「山手」の印象?

まずは一口麺からいただく。おや、見た目よりかなりあっさり上品なダシの味わいだ。そばそのものは小麦多めでほとんど特徴はないが、絡んでいるツユに、いささか「山手」の印象がある。かき揚げはもちろん揚げ置きで、具材は残念ながら結構少ない。ツユにじっとり浸して、トロトロにしてしまうのが良いかと思う。そんな中、ネギのシャキシャキとした歯ざわりは有り難い。さて生玉子。個人的には溶いてしまうのは好きではないので、少しだけつぶした状態で一気に麺とすすってしまう。一口だが、濃厚で贅沢な気分を味わえる。

  • JR山手線「目白」駅改札から徒歩1分ほど

隣駅の池袋駅や高田馬場駅がチェーン店含め多くの立ち食いそば店に恵まれているのに対して、目白駅周辺ではおそらく当店のみの営業になる。その昔はたい焼きも売っていたとか。これからもこの地で愛される一店になるだろう。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。