今回の一杯は駅のホームから。JR「中野」駅より。中央・総武線(各駅停車)の1・2番線ホームにある「あじさい茶屋 中野1・2号店」である。「あじさい茶屋」は、おなじみJR東日本子会社の日本レストランエンタプライズが経営する駅そばブランドのひとつで、都内外に約10店舗、別ブランドには最近もご紹介した五反田駅の「道中そば」などがある。

  • 「鶏から揚げそば」(450円)

定番メニューの中で一際異彩を放つ"ジャンボ"なアイツ

券売機は店外に1台。タッチパネル式で、もちろん交通系ICカード決済可。かき揚げやちくわ天、いか天などのメジャータネ。たぬき、きつね、カレーと、いつもの安定打線。その中で一際異彩を放っていたのが「鶏から揚げそば」(450円)だ。しかも「ジャンボ」。から揚げとそば、なんだか不思議な取り合わせだが、一度チャレンジしてみよう。

店内は、こぢんまりしたL字のカウンター。平日の15時頃ということもあってか、相客はゼロ。店員のオヤジさんは一人で、引き継ぎの時間でも近いのだろうか、備品のチェックをしたり、洗い物をさばいたりなど、せわしなく動いている。食券を渡し「そばで」。汲んだ水を口に運びながら、静かな店内で多少の居心地の悪さを感じた。そう感じたのもつかの間、数十秒でから揚げそばは到着である。

ジャンボから揚げの下にたまたま"そば"?

なるほど、ジャンボの名に恥じぬそのから揚げ。から揚げといえば当然一口大サイズかと思いきや、丼を覆わんばかりの特大一点モノ。大きさに関しては特大フライドチキンといったところだが、味付けは醤油ベースでちゃんとから揚げの顔をしている。やや薄めの肉身はしっかりした歯応え。揚げ置きなので香ばしさはないものの、食べがいは他の天ぷらとは比べ物にならないほどピカイチ。途中時々、そばをすする。「から揚げの下にたまたまそばがあった」という主従関係で、少し贅沢な気にもなる。ただし、取り合わせとして相性がいいかと言われればクエスチョンマークだが……。

  • 「あじさい茶屋」は、JR中野駅の中央・総武線(各駅停車)の1・2番線ホームにある

しかしながら、駅の立ち食いそばは、あらためて良い。ダシのいい香りがホームに漂い、時間を選ばず食欲が刺激させられる。見つけてしまったが最後、いつの間にか、街灯に誘われる虫のように吸い込まれてしまうのだった。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。