副業元年と言われた昨年から、さまざまな副業が注目されているが、実際には副業をしたくても、何をどうすればいいのか分からないという人が多いのが現状だ。そこでオススメなのが「自分の得意なことを仕事にしてしまう」というパターン。この連載では、これまで起業の相談に応じてきたクライアントの中から、スキマ時間とこれまでの経験をいかし、自分の得意なことで収入を生み出している人を紹介していく。
第25回は、元会社員で、今は住職の妻としてお寺の仕事をしながら、「手作りお香教室」を開催されている石濱栞さん(38歳)を紹介する。
「お寺だから、お香」という印象を受けてしまいがちだが、意外にもお香に興味を持って副業として取り組み始めた頃の石濱さんはまだ会社員だったという。そもそも、手作りお香は副業になるのだろうか。
「興味」からのスタート
自分が興味のあることを突き詰めていったら、仕事になっていたという石濱さんだが、今では「お香作りの教室」に加えて「お香作りのプロ(香司)の育成」、「お香の販売」などで、月に25万円程度の収入になっているという。
さすがにそうなるにはいろいろと工夫があったはずで、「ただ突き詰めていったら仕事に」いう範囲を超えている気がしないでもない。
「もちろん、勝手に仕事になったわけではありません。興味を持って楽しんでいくうちに、仕事にできるかも、という流れです。やっぱり大勢のお客様に来ていただけるようになるまでは苦労しました」
体調管理と仕事の分散
初めの頃は、その集客を頑張りながら、商品の管理や税務などもすべて一人でやっていたとのこと。あまりの多忙さに体調を崩すこともあったという。
「体調を崩して仕事に穴をあけてしまったことがありました。ある意味、自分自身が商品のような仕事ですので、体調管理は最重要課題ですね」
これは私自身もそうだが、フリーランスとして働く人にとっても耳の痛い話ではないだろうか。とくに、副業に取り組んでいる人は本業にまで支障を来しかねない。
そうなると「副業などしているからだ」と言われ、本業での居心地が悪くなる可能性もあるので、十分注意したいところだ。石濱さんはその対策として、仕事の分散を行ったという。
「本業もめちゃくちゃ忙しいですので、とにかく体調管理には気をつけています。それからは、一人で仕事を抱え込まないように、自分にしかできない仕事を優先し、それ以外はお弟子さんや外部に委託するようにしました」
やりがいは「熱意」
そんなに忙しく大変な思いをしながらも、手作りお香教室を続けていけるのはなぜなのか、石濱さんに聞いてみた。
「熱意が熱意で返ってくるところにやりがいを感じています。こちらの熱意がそのまま生徒様の熱意になって返ってくるのです。そしてまた、お香の作り方を教えることで、自分自身のお香の知識もより一層深まっていくところが楽しいですね」
とはいえ、不特定多数の人をお客様としているため、稀にルールを守らない困ったお客様が来てしまうのだそうだ。
「お客様を選びたくないと思う反面、ある程度の線引きは必要かなと思っています」
成功の要因は「行動量」
そんな石濱さんは、成功の要因をこう話してくれた。
「ただ好きなことをやっているだけでなく、苦手な『お金』の勉強もたくさんしたのが良かったのだと思います」
確かに「好きなこと」に取り組むことは大切だし、それを突き詰め、多くの人に知ってもらう努力、そしてお金の勉強も大切だ。
しかし筆者が感じた成功の要因はほかのところにある。大変な忙しさの中にあっても、楽しく行動を続けていること、それが成果につながっていることは間違いない。
今後の展望として、今年中にクチコミで話題の「きよめ香砂」の販売や、お香のオンライン講座の開講などを予定しており、さらにお香作りの楽しさを広めていきたいという石濱さん。子育てやお寺の仕事と多忙な中、ますますの活躍が楽しみだ。
筆者プロフィール: 戸田充広
趣味起業コンサルタント。全日本趣味起業協会代表理事。
趣味起業のパイオニアとしてこれまで300名以上の趣味起業家を育て、現在は全国でのセミナー、講演活動のほか、数々の講座でさらに趣味起業家を育て続けている。著書に『稼げる! 自分に合った副業が必ず見つかる! 副業図鑑』(総合法令出版)、『決定版! 趣味起業の教科書』(マガジンランド)、『消費税率アップから家計を守る! サラリーマンのための安全「副業」のススメ』(すばる舎)などがある。「全日本趣味起業協会」