新幹線に乗る際、指定席と自由席どちらがお得なのか? こんな質問を、元駅員である筆者はよく受ける。結論から言うと、それぞれに"お得な点"がある。東海道新幹線の東京=新大阪を例にすると、「のぞみ」利用の場合、指定席(通常期)は自由席より830円高い。実際、高い分のメリットがあるのだろうか。
指定席は自由席より高いが…
筆者はここ数年、取材などの際の経費で新幹線に乗ることの方が多くなった。みなさんの中にも、出張で新幹線を利用する人は多いだろう。その場合、自分で新幹線のきっぷを購入し、領収書を提出して精算したり、新幹線回数券を会社から支給されたりする。
それなら、結局自分の出費はないのだから同じだろう、どうせなら指定席を取ればいいではないかと考える人が多いと思う。また、新幹線回数券は指定席が利用できるため、なおさら指定席を取ればいいという考えに至る人が大半だろう。
自由席にもメリットがある
しかし、自由席にもメリットはある。旧盆や年末年始の繁忙期は除くが、混雑する時期や時間帯でも、列車によっては自由席の方が空いていることがあるのだ。指定席は混雑しているのに、自由席はガラガラだという状況を何度も見たことがある。指定された席があるという安心感は大切ではあるが、そういった場合は自由席の方が快適に過ごせる。
また、自由席の最大のメリットは、わざわざ列車を決めなくても、好きな時間に行き、新幹線に飛び乗れるということにある。東京=新大阪間という、日本の大動脈を結ぶ東海道新幹線では、おおむね10分に1本は「のぞみ」が走っており、乗りそびれたとしても、すぐに次の列車はやってくるのだ。
旧盆やゴールデンウィーク、年末年始など一年で最も混み合う時期に、指定席が取れなかったと嘆き、筆者に相談してくる人もいるが、お年寄りや小さな子どもがいない場合、心配はいらないといつも言っている。早めに駅へ行き、列車の入線時刻よりも前に並べばいい。何本か列車を見送ることになるかもしれないが、立ったまま何時間も過ごすことは避けられる。
指定席と自由席では、基本的に座席などの設備も同じである。時間さえ気にしなければ、自由席でも問題は少ないのだ。
筆者が指定席を選ぶ理由
ただ、筆者はなるべく指定席に乗るようにしている。それにはいくつか理由がある。
まず、指定席を取る一番の理由は「階段の近くに乗りたい」というものだ。東海道新幹線以外でも、自由席は端の方に連結されていることがほとんどで、1両あたりおよそ25mにもなる新幹線の場合、自由席がある場所まで混みあったホームを大荷物で移動するのは、正直辛い。7号車や11号車などのグリーン車付近の車両に指定席を取れば、ホームでの移動は少なくなり、移動の負担も減る。
また、筆者はペットを連れ大荷物を抱えての旅が多いのだが、それでは周囲の人にとても気を遣うので、なるべく出入口から近い、通路側に座るよう心掛けている。このような希望を叶えてくれるのが指定席である。喫煙ルームが近い方がいい、コンセントがある窓側がいい、小さな子どもがいるので出入口付近でないとダメだなどと、それぞれの希望によって選べばよく、駅の「みどりの窓口」では係員が希望に合わせて席を指定してくれる。
この快適さを自由席特急料金との差額で手に入れられるのだから、安いのではないか。また、九州新幹線直通の「みずほ」や「さくら」は、指定席と自由席の座席が異なる。その場合は、自由席の料金に少し金額を上乗せするだけで、ぐっと快適度が上がる。
結局は自分の利用目的による
長距離移動の場合、航空機と新幹線とで迷う人も多いと思うが、本数の多さや、搭乗手続きなどの手間や時間を考え、新幹線移動を選ぶ人も少なくない。「新幹線の料金は高い」と考える人は多いようではあるが、なにに値段分の価値を見出すかは人それぞれである。
自由席というその名の通り、好きな時間に駅へ行って列車に乗るのか。指定席で自分の考える「より快適な移動」を選ぶのか。それぞれの旅に合わせて選べばいいと思う。東京駅発着で数えても、1日に驚くほどの数で新幹線が走っているのだ。旅情などの付加価値も含め、それぞれお得に旅をしてほしい。
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