ビジネスシーンにおいて「プレゼンテーション直前にクライアントの事情で企画の方向性が変わった」、「商品の販売数が予想以上に伸びて、急遽、生産増加が決まった」など、想定外の出来事が勃発し、チームや社内が騒然となることがあります。

その渦中で右往左往しているメンバーを、思わず吹き出してしまうようなジョークやユーモアに富んだふるまいで、落ち着きを取り戻させ、チームや社内の空気を変えてしまう人はいませんか? 今回紹介する、竹中半兵衛もそんな一面のある人だったようです。

リーダーから急な出陣を告げられ、その準備に慌てふためくメンバーに、ユーモラスなふるまいで落ち着きを取り戻させ、リーダーを支えた竹中半兵衛という家臣のエピソードを見てみましょう。

パニックの渦中で牛にまたがる

竹中半兵衛(以下、半兵衛)は、木下藤吉郎(後の羽柴秀吉、豊臣秀吉、以下秀吉)の軍師として活躍。智謀と武術に秀でた武将であり、数々の武功を挙げたといわれています。あるとき、秀吉軍の出陣が急に決まり、その準備で陣屋(野営所)は上を下への大騒ぎに。

大慌ての兵たちは、あちこちでぶつかり合い、中には喧嘩を始める者までいる始末……。その騒然とした空気の中で、なんと半兵衛は、のんびりと牛にまたがっていたといわれています。(注1)

ひとりの家臣が「この忙しいときに、竹中殿は、なぜ牛にまたがっておられるのです?」と尋ねると。「そのようなときだからこそ、牛にまたがり、ゆっくりと考え、冷静になる必要があるのじゃ」と答えたそうです。

そのユーモラスな姿に、秀吉陣営の中には思わず吹き出す者もいたことでしょう。いい意味で、その場の空気をくつがえした半兵衛のふるまいと言葉により、秀吉陣営は落ち着きを取り戻したといわれています。(注1)

(注1)上記エピソードは伝承であり、内容については諸説あります。

優れたマネジャーはユーモアがある

近年、日本でもユーモアをビジネスに活かす考え方に注目が集まっているそうです。アメリカのある大学の調査によると、優秀なマネジャーが持つ資質のひとつに「ユーモアのセンス」があるそうです。ユーモアは、職場の雰囲気を明るくし、メンバーの一体感を強くする効果をもたらすといわれています。

なぜ、ユーモアがビジネスシーンで良い効果をもたらすのか? その答えはユーモアによって生まれる笑いにあるとのこと。笑いにはいくつかの発生パターンがあるそうですが、ここでは「緊張と緩和のパターン」を紹介します。

たとえば、あなたの目の前で上司が電話で誰かに平謝りしているとします。あなたは仕事上のトラブルが発生したのでは? と不安(緊張の状態)になるはず。もし、本当に仕事上のトラブルであればチームの一大事ですが、実は、電話相手が上司の奥さんであり、上司があえてトラブルっぽく演技したことが分かったら、その場は笑い(緩和の状態)に包まれることでしょう。ユーモアには、現場の緊張を緩和させ、場の空気を変えるチカラがあるのです。

ユーモアでチームをまとめ、リーダーを支える

ユーモアに富んだ表現は、言いにくいことを部下に伝える際のクッションにもなります。ピリピリした雰囲気の中で注意・指示を受けるより、思わずクスっと笑ってしまうような言葉や比喩を用いて、明るい雰囲気の中で注意・指示された方が前向きに受け入れられるはず。

また、自分の意見をはっきり伝えたいときも、つねにユーモアを忘れない、明るい人物の方が伝えやすいですよね。その相手が上司や経営トップであればなおのこと。ビジネスの現場にユーモアに富んだ人材がいるだけで、チームのコミュニケーションが取りやすい環境になり、チームを束ねるリーダーも成果を上げやすくなる、という好循環が生まれるそうです。

ここで大切なのが、単なる面白い話とビジネスシーンで効果をもたらすユーモアは異なるということ。人間はつねに「この状況では、こうする」という流れを頭の中に持っているそうです。その流れを的確に読み、あえて「やや外れた」ふるまいや言葉を発することで、周囲に笑いと新しい流れが生まれるとのこと。

その流れを作るためには、半兵衛最大の資質といわれる、冷静沈着な思考力と行動力が不可欠。とかく暴走しがちなリーダー秀吉が頼りにした理由は、そこにあったのかもしれません。