全国の神社やお寺の参道には、何百年と愛されてきた老舗の和菓子屋さんや社寺ゆかりの名物を商うお店があります。旅はその土地の名物を食べるのも楽しみのひとつですが、せっかくの社寺詣。社寺ゆかりの名物に舌鼓をうってみませんか。
令和3年の干支は丑。第1回は丑が神様のお使いである東京・湯島にある湯島天満宮と、かつて境内にあった古木に因んだ名物“むすび梅”をご紹介します。
学問の神様・菅原道真公を祀る湯島天満宮
天之手力雄命を祀る神社として雄略天皇2(458)年に創建したと伝えられる湯島天満宮。その後、天平10(1355)年に菅原道真公を合祀し、学問の神様にあやかって江戸時代になると林道春や新井白石など大勢の学者から崇敬されました。
文人や庶民にも広く親しまれ、その賑わいは安藤広重の「江戸百景」にも描かれたほど。梅の名所としても知られており、行楽客も数多く訪れたといいます。いまでも20種類以上、樹齢70~80年を含む約300本もの梅の木が境内に植えられていて、2月初旬から3月初旬には梅まつりを開催。芳しい梅の花を愛でに40万人近い参拝者がやってきます。
令和3年は丑年だけに、撫で牛にも注目
湯島天満宮の境内には「撫で牛」と呼ばれる大きな牛の像も見ることができます。お祀りされている菅原道真公が丑年丑月丑日生まれだった、道真公のご遺体を運ぶ牛車が動かなくなってしまったために近くに埋葬したなど、牛と道真公の逸話は数多く残されています。その由縁から天満宮の神使は丑とされ、全国にある天満宮の境内には撫で牛の像をみることができます。昔から頭を撫でると賢くなり、身体の不調を感じる場所を撫でると良くなるという信仰があります。
境内にあった古木ゆかりのおこわ「むすび梅」
お詣りしたあとは、境内から徒歩3分の場所にある喫茶・御菓子司「つる瀬」で湯島天満宮ゆかりの食べ物をいただきましょう。「つる瀬」は昭和5年に「尾張屋」として創業後、昭和30年に現在の店名に改称した菓子舗。地元の人々のみならず、湯島天満宮の参拝後の休憩にも定番のお店です。
このお店で味わいたいのが「むすび梅」という白蒸しのおこわ。かつて湯島天満宮の境内には、雄雌の幹の先端がむすび合った「むすび梅」と呼ばれる樹齢190年の梅の木があったそう。梅の木を植えた夫婦は仲良く暮らし、長寿に恵まれたことや御祭神の菅原道真公のご神徳にちなんで健やかに繁栄するようにとの願いを込めて名付けられたそうです。
モチモチとした蒸米は新潟産のコガネモチを使用し、鶴の子大豆を混ぜて旨みたっぷりの刻み昆布を間に挟んでいます。紀州の小梅のほどよい酸味と昆布の旨味が絶妙で、出汁の風味が強いお吸い物と一緒に食べると「いいものを食べた!」と大きな満足感に浸れます。
ほかにも「つる瀬」には「菅原道真公 千百年大祭奉献銘菓」として平成14年に献上された「ふく梅」などのお菓子も。初詣の帰りにぜひ立ち寄ってみては。
※お正月三が日中は喫茶スペースはお休み。店頭で持ち帰りのみ購入可
DATA
湯島天満宮
東京都文京区湯島3-30-1喫茶・御菓子司「つる瀬」
東京都文京区湯島3-35-8