連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
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行き当たりばったりは危険

老後破産を避けるには、若いときからお金ときちんと向き合うことが大切。「お金にルーズ」なのは老後破産につながります。

昔と違い、今はサラリーマンのお給料が毎年右肩上がりに上がっていくという時代ではありません。そんな中で一番よくないのは「行き当たりばったり」。ルーズにお金を使っていると、必要なときに必要なお金を準備できず借金に頼ることになります。

例えば、十分な頭金を用意せずにマイホームを購入してしまい、住宅ローンの負担が重くて返済するだけでせいいっぱい。あるいは、子どもの教育資金を貯めておかなかったために教育ローンを借り、その返済に追われる、など。こういったことがあると、老後のお金の準備に手が回らず、十分な貯蓄がないまま老後を迎えることになります。これが老後破産のきっかけになるのです。

「お金にルーズ」が老後破産のきっかけに

逆にいうと、これから先、お金が必要になるイベントを想定して、あらかじめ資金の準備をしておけば、老後破産のリスクが抑えられるわけです。今はまだマイホームの購入や子どもの教育費など具体的な目標がなくても、できる範囲でお金を貯めておけば、どんなことにも備えられます。

また、これから先、いろいろやりたいことが出てくるかもしれません。例えば、大学院で学ぶ、留学する、お店を持つ、起業する、別の土地へ移住する、などなど。そんなとき、お金があれば、少なくとも経済的な理由であきらめるといったことは避けられます。 お金は人生の選択肢を増やしてくれるのです。

支出をコントロールすること

老後破産を避けるためにも、夢をあきらめないためにも、計画的な貯蓄が大切。その方法は、これまでお話ししてきたように「支出をコントロール」して「先取り貯蓄」することです。

支出をコントロールするということは、お金を計画的に使うということ。1カ月、あるいは1週間ごとにいくらまで、と決めて、それ以上をお金を使わないようにするのです。

そのためには、お給料日に1カ月分のお金を引き出して、その範囲でやりくりするとか、月曜日にその週使っていい金額だけをおサイフに入れておく、といった方法が考えられます。

それでも、「ムダ遣いしているつもりはないのに、なぜかお金が足りなくなる」ということがあるかもしれません。それは、お金をルーズに使っている証拠。こういう人は、自分が何にお金を使っているか、一度きちんと把握してみましょう。

シンプルなアプリで家計簿をつけてみる

携帯電話やスマホに家計簿機能やおこづかい帳の機能がついていたら、それを使います。そういう機能がないものは、できるだけシンプルなアプリをダウンロードします。費目は細かくせず、食費、飲み会費、本・雑誌代、服飾・美容費、交際費、趣味費、雑費などざっくりでOKです。必要に応じて、健康費やペット費、車費、自己啓発費など自分なりにカスタマイズしましょう。

あとは、お金を使うたびに携帯・スマホで入力していけばOK。お財布の中身と残高は合わせなくてかまいません。大切なのは支出の把握。1カ月やってみると、何にどれくらいお金を使っているかがわかります。記録することによって支出の傾向がわかれば、「趣味にお金を使いすぎているな」「食費はもう少しおさえられるかも」などムダの削り方も見えてくるはずです。

お金を使うのはカンタンですが、貯めるのは大変。だから、支出を記録することでルーズに使うのを避け、「先取り貯蓄」で自動的に貯まるようにする。これが賢いお金とのつきあい方であり、老後破産を回避するための第一歩なのです。

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。