連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。


老後破産というのは、リタイアしたあと、生活費が収入を上回る状態が続き、貯蓄を取り崩して補っていったけれども貯蓄が尽きてしまった、という状態ですよね。

リタイア後の収入の柱は公的年金です。結婚していれば、2人分の年金が収入となり、生活費は一人暮らしの場合の1人分より少なくてすむのに対して、シングルの人は、1人分の年金で、1人分の生活費を支出していかなければならないので、お金の面では不利といえます。では、シングル男子とシングル女子を比べるとどうでしょう。

老後破産リスクが高いのはどっち? (画像はイメージ)

年金受給額は全体的に男性が多い

年金は、全体として見ると、男性より女性の方が少ないことがほとんどです。

公的年金には老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つがあります。老齢基礎年金は原則としてすべての人が、国民年金の保険料を払った月数に応じた額を受け取れます。さらに、会社員や公務員の場合は、厚生年金や共済年金に加入していた月数分の老齢厚生年金が上乗せされます。

老齢厚生年金の額は加入していた間の給与の額が反映され、給与が高かった人ほど、年金額も多くなります(上限はありますが)。一般的に女性は男性より給与が低いことが多いため、同じ勤続年数でも、女性は男性より年金額が少なくなりがちです。

また、女性の場合、非正規で雇用されているなどして厚生年金等の加入期間が短い、あるいは全くない、というケースもあり、そうなると年金額はかなり少なくなってしまいます。

公的年金に関しては、女性は男性より受け取れる額が少なく、その分、老後破産リスクは高いといえます。年金のことを考えれば、女性も厚生年金に加入する働き方が望ましく、更に"自分年金"もしっかり作っておく必要があります。

女性は人とのコミュニケーションで乗り切る傾向に

シングル男子は、公的年金の額は女性より多いとしても、家事能力がないために生活費がかさむというケースはあるでしょう。例えば、自分で食事を作らず、外食が多かったりコンビニで買ったりすると支出が多くなり、貯蓄の取り崩し方が早くなるということはあるかもしれません。

男性の中には、何か困ったことがあっても誰にも相談しない人もいます。病気や介護、そのほかの困りごとがあったとき、相談できる人がいれば何かしら手助けしてもらえるかもしれないし、役所の窓口へ行けば何らかの補助や援助が受けられる可能性もあります。なのに、それができない、あるいはしたくないといって何も手を打たなかったために老後破産してしまうというケースもないとはいえません。

その点、女性の方がコミュニケーション能力が高く、誰かに相談することで困難な状況を乗り切っていく傾向はあるように思います。

老後破産はお金の問題ではありますが、多少お金が足りなくても、周囲の人どうしで助け合って補っていくことはできるはず。そういう点では、人とのコミュニケーション能力やいろいろ相談できる友人・知人を作ることも老後破産の回避に役立つといえるでしょう。

※画像は本文とは関係ありません。

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。