「桜」は、日本人にとって特別な花。その花が咲く時期は、なぜかワクワクする人が多いのではないでしょうか。自分は、違った意味でワクワクしていました。それは、桜と列車を同時に狙える、年に1回だけのシャターチャンスがやってくるからです。
東京周辺で、桜と列車を狙える撮影地といえば、中央線中野 - 東中野間の土手や、市ヶ谷 - 飯田橋間の外堀沿いなどが有名ですが……。意外にも、山手線目黒 - 五反田間にもあったのです。それが、こちら。
調べてみると、ここの桜は1987(昭和62)年に、「しながわ百景」の1つ「花房山の桜並木」として品川区が選定。この辺りでは、有名な桜並木だったのです。撮影当時は、知りませんでしたが(笑)。
ここでの狙いは、山手線の103系ではありません。本命は、山手貨物線をいくEF15牽引の貨物列車。当時、午後帯に数本の貨物列車が設定されていて、そのうちの1本が高崎第2機関区のEF15が牽引する貨物列車でした。この列車を、手前の線路を走る山手線が被らないことを祈りつつ待ちました。
狙いのEF15牽引の貨物列車がやってきた |
山手線が被らないことを祈りつつシャッターを切る。切った瞬間、山手線外周りがほんのちょっと顔を出していた(道路標識の下にわずかに見きれている)。2枚共に、山手線目黒 - 五反田間にて。1981(昭和56)年4月 |
この写真を見ると、今でも悔やみますねぇ。なぜ、最初からアングルを横にして撮らなかったのかと。一瞬の判断ミスです。
続いて、東急目蒲線(現: 目黒線)の西小山駅。通学や通勤で使っていた路線なので、春になると、駅から立会川緑道の桜並木を見おろすことができました。この桜と目蒲線を一緒に狙ってみました。
ラストは、南武線南多摩駅。ここは南武線に乗っていた時に偶然見つけ、すぐに下車して桜ごしに73形を狙うために待ちました。しかし、春の夕日は落ちるスピードが予想以上に早く、73形がやって来た頃にはかなりの逆光に。
松尾かずと
1962年東京都生まれ
1985年大学卒業後、映像関連の仕事に就き現在に至る。東急目蒲線(現: 目黒線)沿線で生まれ育つ。当時走っていた緑色の旧型電車に興味を持ったのが、鉄道趣味の始まり。その後、旧型つながりで、旧型国電や旧型電機を追う撮り鉄に。特に、73形が大好きで南武線や鶴見線の撮影に足繁く通った。