ベトナム総合情報サイト「VIETJO」(ベトジョー)が1月23日、「アジアの美しい鉄道トップ10にベトナムの南北統一鉄道」と報じた。英国の新聞「デイリー・テレグラフ」の電子版「The Telegraph」が「アジアで最も美しい鉄道トップ10」の2018年版を発表。その中に、ベトナム鉄道総公社のベトナム統一エクスプレスが選出されたという。
その記事を読んでいたら、最後に「トップ10には(中略)日本の横浜~下田間の『THE ROYAL EXPRESS』が選ばれている」とあった。日本の数ある観光列車の中でひとつだけ。「デイリー・テレグラフ」はイギリスで発行部数1位といわれる老舗新聞社。その電子版「The Telegraph」は、日本だと「YOMIURI ONLUNE」「朝日新聞デジタル」に相当する。英語圏は広いから、影響力はもっと大きいだろう。大変な名誉と思われる。
ベトジョーが参照したと思われる記事を探し当てた。1月10日付で「The 60 greatest train journeys for 2018」(2018年、世界で最も素晴らしい列車旅60)と題した記事があり、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ、ノースアメリカ、オーストラリアの6カテゴリーで10本の列車を選んでいた。アジア版の9番目に「Yokohama to Shimoda, Japan」という項目があり、日本で唯一、伊豆急行と東急電鉄が運行する「THE ROYAL EXPRESS」が選ばれていた。見出しで「THE ROYAL EXPRESS」としなかった理由は、英国では「THE ROYAL」が王室を示すため、誤解を避けたのかもしれない。
テレグラフが選んだ「The best train journeys in Asia for 2018」(アジアのベスト列車旅2018)は次の通り。
Jungle Train | マレーシア | 12時間の夜行列車。食堂車はないが快適な寝台がある。断崖絶壁を通る |
Eastern & Oriental Express | タイ | シンガポール、タイ、マレーシア、ラオスを通る豪華列車。ビクトリア王室のようなシャワー付き個室、オープンタイプの展望車 |
Dhaka to Sreemangal | バングラデシュ | 高級モスクとヒンズー教の寺の街からサバンナを駆け抜ける。11時間の寝台列車がある |
Mumbai to Goa | インド | Konkan Kanya Expressは約13時間半で約580kmを走る。冷暖房完備のファーストクラスがあり、ルームサービスでカレーを提供する |
Kunming to Hanoi | ベトナム | 中国の昆明とベトナムのハノイを結ぶ国際列車。所要時間は16時間。中国の虎跳峡やベトナムのSapaの棚田を通る |
Jakarta to Yogyakarta | インドネシア | ビジネス都市ジャカルタと伝統的なジャワ美術の中心地ジョグジャカルタを結ぶ8時間の旅。鶏肉と米のランチが電子レンジで温められて届く |
Beijing to Shanghai | 中国 | 世界最速の旅客列車。1,318kmを約4時間半で走破。ボタンを押すとフラットベッドになるビジネスクラス。最高クラスは食事とVIPラウンジ付き |
Kandy to Ella | スリランカ | 紅茶輸送ルートを走る。ガラス張りの展望車があり、新鮮なマンゴーとパイナップルを売りに来る。夜行もあり |
Yokohama to Shimoda | 日本 | 富士山ビュートレインやななつ星を生み出した会社の最新版。横浜から3時間で伊豆下田へ。世界最高のレストラン、スペインのエル・ブリで修行した山田チカラ氏が監修したランチを提供する |
Reunification Express | ベトナム | 海岸沿いに36時間も走行する南北統一急行。沿岸のリゾート、絹の町ニャチャン、ベトナムの3番目に大きい都市ダナン、絶え間ない砂浜を経由する。寝台車は最高級のコンパートメントタイプ |
「THE ROYAL EXPRESS」の記述についてはやや誤解があるようで、水戸岡鋭治氏デザインの最新の列車とすべきところを、同じ事業者が「富士山ビュー特急」や「ななつ星 in 九州」を手がけたように読み取れる。どうりで「The best train journeys in Asia for 2018」のページトップに「ななつ星」の展望個室の写真が⼊っていたわけだ。「THE ROYAL EXPRESS」にはこんな個室はないし、富士山もたぶん見えない。しかし、料理についてスペインのエル・ブリで修行した山田チカラ氏が監修したという記述は正しく、世界の富裕層には魅力的だろう。
日本の上質な観光列車が海外で紹介される。これは日本政府が推進する外国人観光客誘致推進政策に合致する。観光列車の盛り上がりがさらに高まりそうだ。また、他の地域版も魅力的な列車や路線が多い。海外鉄道旅行ファンにとって参考になるだろう。
なお、「The TELEGRAPH」の「The 60 greatest train journeys for 2018」は今年から始まった企画のようで、「2018」を「2017」など過去の年に書き換えて検索してもヒットしなかった。「THE ROYAL EXPRESS」の記述を見た限り、もう少し正確に書いてほしいとは思った。しかし年に1度の観光列車国際アワードとして定着したら楽しいと思う。