一般の家庭でもよく見かけるマーガリンとバター。さまざまな料理に使われる両者ですが、その具体的な違いはしっかりと理解されているのでしょうか。
「バターは牛乳から作った天然由来のもので、マーガリンは人工的に作られた合成物で、アメリカで危険視されているトランス脂肪酸がたくさん含まれているもの」と考えている人もいるかもしれません。
そこで今回はこの2つの違い、さらには最近増えつつある「第3のバター」とも呼ばれている「ファットスプレッド」について紹介しましょう。
「第3のバター」とは
スーパーマーケットやデパートなどにいくと、バターやマーガリンが売っているコーナーがありますね。棚には大きく分けて、「バター」「マーガリン」、そして「ファットスプレッド」が並んでいるかと思います。3つ目のファットスプレッドというのは聞き慣れない言葉かもしれませんが、実は各社メーカーから販売されており、食卓に浸透しつつある商品です。
「第3のバター」というだけあって、バターに近い味に加工されています。マーガリンよりも油分が少なく、カロリーも3つの中で最も控えめという優れものです。その種類も、チューブ入りのバターをマーガリンで割ったようなものから、ピーナツバター風のもの、チョコクリーム状のものまで実に数多くあります。ファットスプレッドについては、次回でさらに詳しく紹介します。
バターとマーガリンの違い
牛乳由来でその乳脂肪を固めたバターは味わい深いため、お菓子などに使うと高級感のある味わいとなります。そして、かなりのカロリーがある点も、皆さんはご存じでしょう。
マーガリンは、「水素添加法」と呼ばれる油の融点を変える発明が19世紀末に生まれたことから作られた商品です。本来ならば常温で液体であるサラダ油と同じような植物油を、常温で固体になるように分子の形を変えて作られています。
ただ、そのままだと味がしないただの油の固まりのため、バター風の香料や味を付け加えて、バターの代用として作られています。カロリーも飽和脂肪酸たっぷりのバターに比べ控えめなのですが、トランス脂肪酸が米食品医薬品局(FDA)などをはじめとして、なにかと有害と言われています。トランス脂肪酸についても、また詳しくお伝えします。
「隠れマーガリン」、その正体とは
「マーガリン有害論」の是非はここでは特にしませんが、実はマーガリンを避けに避けている人ほど、「隠れマーガリン」とどっぷり仲良くしている場合が多くあります。
その「隠れマーガリン」とは、「ショートニング」と言われるものです。マーガリンが香料などでバター風に加工されたものに対して、真っ白な油の融点を変えただけ(水素添加しただけの)ものがショートニングです。
ケーキの材料としてスーパーなどでも普通に売っていますが、お菓子作りをしない人にはなじみのない食品かもしれません。「マーガリンの材料」ともいえるショートニングは、お菓子やパンに入れるとバターよりもサクサク感を簡単に出すことができるので、重宝されています。
コンビニエンスストアなどで販売されているパンはもちろんのこと、安価なクロワッサンにも大量に使われています。他にも一部のファストフードのフライドポテトは、ショートニングで揚げたものです。また以前紹介した、準チョコレートにもショートニングの"親戚"と呼べるものが多く含まれ、多く摂取すると、ニキビの原因になることもあります。
いずれにせよ、今回紹介した3つは油脂を多く含み、カロリーも相当なものになります。摂取するのはほどほどにするようにしましょう。
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筆者プロフィール : くられ
『アリエナイ理科ノ教科書』(三才ブックス、シリーズ累計15万部超)の著者。全国の理系を志す中高生から絶大な支持を得ており、講演なども多数展開している。近著に『ニセモノ食品の正体』(宝島社)がある。メールマガジン「アリエナイ科学メルマ」やツイッターなどで、日々に役立つ話を無料配信している。