先日、かなり尖った創作系料理を出すそば居酒屋で、衝撃的なメニューと出会ったんです。それは、麺はそばなんだけど、つゆは濃厚な鶏と煮干しのラーメンスープという、独創的な一杯。
これがですね、すごく美味しかったんですよね。
僕は昔から、昔ながらの街のおそば屋さんでラーメン類を出しているお店は多いのに、その逆、つまり、日本そばを打ったり、メニューにラインナップしたりしている中華料理屋さんがないことを不思議に思っていたんです。それに対しての、想像もしない角度からのアンサーでもあったというか。
ちなみに実は昔、そばやうどんやラーメンと、その定番のつゆとの相性を確かめるため、あれこれ入れ替えて食べる実験はしてみたことはあるんです。その時は、そばを鍋でゆでてさっと洗い、シンプルな中華スープと合わせてみたんですが、あんまりピンとこなかった。ところが先述のお店の、とろりと濃厚なスープとそばの相性は抜群だった。そうか、以前は、そば=さっぱりという先入観が、自らの可能性を狭めてしまっていたのか。と、反省しましたね。
そこで思いついたのが今回の「中華そば」ならぬ「中華“風”そば」。中華そばはあくまで、昔ながらのラーメン。ではなくて、濃厚なラーメンスープで食べる日本そばというわけです。
驚くほど簡単に完成
最低限必要な材料は、ゆでおき麺などではなく、鍋でゆでるときっちりと「そば湯」がとれる、生そばなど。それから、市販のラーメンスープ。味は、濃厚なもののほうが醍醐味を味わえると思いますが、お好みであれこれ試してみるのが楽しいでしょう。特に濃厚煮干し系は間違いないでしょうが、今回はとんこつ醤油味をチョイス。
これをですね、いいですか? 今から信じられないことをしちゃいますよ? 鍋にどんぶり一杯ぶんくらいの適量のお湯をわかし、そば1人前と、スープ1人前を同時に入れてしまいます。
そう、つまりですね、生そばをゆでたときに生じるそば湯。通常、別にとっておいて食後につゆを割って飲んだり、そば焼酎で割ったりするあれのとろみを、そのままラーメンスープのどろどろ感に転用してしまおうというわけなんですね。
なので、手順はめちゃくちゃ簡単。あっという間にゆであがります。
あとはもう、好きな具材をトッピングすればいいだけ。今回は、味玉、メンマ、それから、キャベツやもやしなどの野菜と豚肉をにんにく醤油風味でよ〜く炒めたものをどさっとトッピングしてみました。
まずスープなんですが、市販のラーメンスープの素をお湯で溶いただけのものより、口当たりはずっととろりと濃厚。それでいながら、その濃厚さがそば湯由来なので、上品でしつこさがない。
で、肝心の麺との相性。具材の下から引き出すと、明らかに中華麺ではないことに一瞬脳が混乱しますが、食べてみると違和感はそこまでなし。熱いスープに浸って柔らかめになった麺がスープの旨味をよく吸い、きちんとそば粉の味の主張も感じ、しかしやっぱりどこか品がいいというか、あっさりと食べられて、本当にいいですよ、この組み合わせ。
きちんと満足感はありつつ、ヘルシーなそばなので罪悪感は若干薄め。お酒を飲んで帰ってきて、どうしてもラーメンが食べたいときなどにも、ありなんじゃないでしょうか。
とはいえ、このちょっとした違和感をつまみにお酒を飲むのも楽しく、ビールやチューハイはもちろん、紹興酒や日本酒と合わせてみるのもおもしろそうな、まだまだ可能性を感じるレシピでした。
作りかた(ひとりぶん)
【材料】
・市販の生そば:1人前
・市販のラーメンスープの素:1人前
・お好みの具材
※すべての分量は目安です。お好みで調整してください。
【作りかた】
1.鍋に適量の湯を沸かし、そばとラーメンスープの素を入れて煮込む。
・お好みの具材
2.麺がゆであがったらどんぶりに移し、好きな具材をトッピングする。