「するめ」についてざっくりと説明すると、いかの身を干して乾燥させた加工食品のこと。江戸時代中期ごろから、名前の“する”の部分が「お金をする」という言葉を連想させるという理由で、縁起をかついで「あたりめ」と呼ばれるようにもなりました。

なんて話は、よく知られていることですよね。するめ、あたりめといったら、いか。それ以外にあるはずがありません。

  • これがするめ

ところが先日、五反田にある「串揚げ酒場 仲丸」という店で飲んでいた時に、初めて目にする「鶏のあたりめ」というメニューがあったんです。気になるじゃないですか。頼んでみたらこれが、鶏肉料理でありながら、確かにあたりめっぽくて、めちゃくちゃクセになる味なんですよね。ちびちびと食べられて、酒のつまみに最高。

気になって店長さんにどういう料理なのかを聞いてみると、鶏むね肉を素揚げし、冷めてから細く割いて、塩をまぶしただけなんだとか。一体どういうきっかけで思いついたんだかわからないけれど、料理としてはシンプルだ。よし、再現してみよう!

揚げ焼きにして割くだけ

さっそくスーパーで鶏むね肉を買ってきました。つくづく、お手頃で庶民の味方な食材ですよねー。

  • 100グラム59円

そうしたら、むね肉1枚から皮を取り除き、少ない油でも揚げやすいよう、薄めに切り分けます。魚でいうと3枚におろすイメージでしょうか。

  • こんな感じ

続いてフライパンに1cm弱くらいの油を注ぎ、火にかけます。油がちりちりしだしたら弱〜中火くらいにして、鶏肉をその油で、じっくりと揚げ焼きにしていきます。

  • じわじわ

ちなみにこういうレシピにおいて「むね肉1枚から皮を取り除き」のくだりで取り除いた鶏皮、どうすればいいの? なんて思うこと、意外とありません? このおつまみ革命では、そんな部分も積極的にフォローしていきたいと思っております。

というわけで鶏皮は、別のフライパンを弱火にかけて鶏皮をじっくりと焼き、塩適量をふって、酒のつまみにするのが良いと思います。

  • こうです

コンロが2口以上あれば、メインのむね肉を揚げながらキッチン立ち飲みが始められてかなり幸せ。そうでないという方は、レンチンして刻んでポン酢とあえるとか? あ、むしろ鶏むねと一緒に揚げ焼きにしてもいいのかな? 僕は焼きが好きなんでまだ試してないんですが、いろいろとやってみてください。その創意工夫こそが晩酌クッキングの楽しさなので! (フォローになってるかな……?)

少々脱線しましたが、途中で鶏むね肉をひっくり返し、両面にしっかりと焼き色がつくくらいまで揚げ焼いたら、網つきのバットや重ねたキッチンペーパーの上などに取り出して、油を切りつつ粗熱をとっていきます。

  • しっかりと火が通ったら

  • 冷ます

30分ほどもほおっておけば、手で触っても熱くないくらいに冷めていることでしょう。そうしたらその肉を、繊維に沿って手で割いていきます。

  • けっこう気持ちいい作業

割き終わったら味を見つつ、少しずつ塩をふって全体を混ぜ、いい味加減になったら完成。塩気は少し強めくらいのほうが酒のつまみにはいいでしょうが、そのあたりはお好みで。

  • 完成! 「鶏むね肉のあたりめ風」

いや〜これがですね、鶏のうまみと香ばしさ、そして塩気を感じながらちびちびず〜っと酒が飲めるという、酒のつまみとして相当理想的な一品なんですよ。素揚げしただけなので、カロリーもそんなに高くないはずだし。

ここであらためて、僕が特に件の酒場、仲丸の料理人さんをすごいと思った点が、ほら、むね肉って巷では、“どれだけ柔らかくジューシーに調理できるか”が焦点になりがちじゃないですか。脂が多い部位ではないから、ともするとパサパサになりやすい食材ではあるので。ところがこのメニューはその真逆を行っている。鶏むね肉をあえて、かちかち、ぱさぱさ方向に調理し、その噛みごたえと、じわじわと染み出す旨味が持ち味の逸品に仕上げている。その発想がどこからやってくるのか、想像すらもできませんが、恐れ入ったといしか言いようがありません……。

  • マヨ七味が合うんだ、また

確実に、つまみとしての鶏むね肉の最適解のひとつと言って間違いないレシピでしょう。

作りかた

【材料】

・鶏むね肉:1枚
・油(サラダ油など、お好みの油):適量
・塩:適量
・マヨネーズ/七味:お好みで

【作りかた】

1.鶏むね肉から皮を取り外し、厚さが均等になるくらいを目安に、3枚ほどに切り分ける。
2.フライパンに油を熱し、弱〜中火でじっくりと揚げ焼きにする。
3.両面に焦げ目がついたら取り出して油を切り、粗熱をとる。
4.冷めた鶏肉を手で細く割き、塩をふってよく混ぜる。好みの味加減になるまで。
5.お好みでマヨネーズ&七味を添える。